重度大動脈弁上狭窄・肺動脈低形成を伴ったWilliams syndrome の全身麻酔下の歯科治療



日本臨床麻酔学会第23回大会
2003年10月23(木)・24(金)・25(土)
小長谷 光、大江 智可子、脇田 亮、海野 雅浩
東京医科歯科大学大学院 医歯学総合研究科 麻酔・生体管理学

我々は重度大動脈弁上狭窄を伴ったWilliams syndromeの全身麻酔下歯科治療を行ったので報告する。患児は2歳4ヶ月、男性、体重9.4kg、身長76cm、妖精様顔貌、大動脈弁上狭窄からウイリアムス症候群と診断された。抜歯3本および充填処置4本が必要であった。心臓カテーテル検査では、大動脈弁上狭窄部4mmで圧較差70〜90mmHg, 末梢肺動脈低形成(左右PA低形成 左右とも3〜4mm・圧較差 60mmHgであることが指摘された。精神発達遅滞が認められ、多動性であり、抑制下の歯科治療は全身負荷となり、心不全や突然死の転帰をたどることが予想されたため本学小児循環器グループの支援の下、全身麻酔下での処置を計画した。手術前日に本学小児科病棟に入院し、小児循環器医の術前評価ならびに検査を行った。入室1時間30分前にトリクロホスナトリウムシロップ1gを内服させ、塩酸ヒドロキシジン10mgペンタゾシン10mg筋肉内投与した。ミダゾラム1.5mg、フェンタニル30μgベクロニウム1mg投与後気管内挿管し、麻酔維持は笑気・セボフルランで行った。手術時間は2時間であった。手術終了後硫酸アトロピン0.2mg、ネオスチグミン0.5mgでリバースし、抜管した。その後回復を観察し約1時間経過したところでroom airでSPO2 92〜93で、呼吸数25〜30回であり、ややせん妄状態であったが小児科病棟に帰室させた。ところが帰室後体温は39.5℃まで上昇しており、生化学検査でCPK1345と上昇していたことが判明した。手術終了約12時間後には体温は37.4度と低下した。その後5日間の入院の後軽快退院した。

考察

本症例の全身麻酔法はなるべく可及的に深い麻酔となるように配慮した。ウイリアムス症候群は悪性高熱症を引き起こす遺伝系を有すること報告されているが、本症例はそれを示唆している。

(2003年10月)

−=−=−=−=−=−=−=−=−=−=−=−=−=−=−=−=−=−=−=−

下記医学雑誌にも同じ内容の論文が掲載されていました。

(2007年8月)

−=−=−=−=−=−=−=−=−=−=−=−=−=−=−=−=−=−=−=−

General anesthesia for dental treatment in a Williams syndrome patient with severe aortic and pulmonary valve stenosis: Suspected episode of postoperatively malignant hyperthermia.

Kohase H, Wakita R, Doi S, Umino M.
Associate professor, Section of Anesthesiology and Clinical Physiology, Department of Oral Sciences, Graduate School, Tokyo Medical and Dental University.
Oral Surg Oral Med Oral Pathol Oral Radiol Endod. 2007 Jul 31;


目次に戻る