Williams症候群患者における口腔顎顔面領域の形態学的検討



川ア 浩正、山崎 卓、荒川 忠博、扇内 秀樹、松岡 瑠美子
東京女子医科大学 医学部 歯科口腔外科学(主任:扇内秀樹教授)
同 循環器小児科学(主任:黒澤博身教授)
東京女子医科大学雑誌 73(12)(2003/12/25/) Page 516-525

Williams症候群は、1961年にWilliamsらが精神遅滞、大動脈弁上部狭窄および特異顔貌を有する症候群として報告した疾患で、染色体7q11.23にあるエラスチン遺伝子、LIMキナーゼ1遺伝子などを始めとする約20種類の遺伝子を含む領域の微小欠失が原因の隣接遺伝子症候群と考えられている。今回われわれは、本疾患群に対し口腔顎顔面領域の形態学的検討を行ったので報告する。対象は当院附属日本心臓血圧研究所循環器小児科でFISH法により染色体7q11.23の微細欠失が確認されWilliams症候群と確定診断された患者15例で、方法は頭部X線規格写真、顎態模型、口腔内およびX線所見による分析を行い、頭部X線規格写真分析の方法はRicketts法を使用した。結果は、頭部X線規格写真分析では下顎のアーク、下顎中切歯突出量、上顎大臼歯の位置、前頭蓋底の長さ、下唇の突出量が高値で日本人平均値と比較し有意差を認め、その結果、上顎前突、下顎前歯の唇側傾斜、下唇の突出および顔面形態ではdolicofacial patternなどがWilliams症候群の顔貌上の特徴と考えられた。顎態模型、口腔内およびX線所見による分析では歯の先天性欠如が10例26歯に認められ、下顎側切歯が11歯(42.3%)と最も多かった。歯の奇形は10例(48歯)に認め、矮小歯が6例(14歯)、短根歯が6例(34歯)であり、矮小歯は上顎側切歯が12歯(85.7%)と最も多く、短根歯では上顎第二小臼歯が9歯(26.5%)と最も多かった。

このように顎顔面口腔領域の異常が高率に認められることから、Williams症候群においては定期的な歯科口腔外科的チェックと早期からの歯科矯正学的治療が重要であると考えられる。

(2004年5月)



目次に戻る