日帰り全身麻酔下歯科治療を行ったWilliams症候群の1例



三浦 明子、砂田 勝久、篠原 健一郎、山城 三喜子、阿部 恵一、今井 智明、三代 冬彦、中村 仁也
日本歯科大学歯学部歯学科麻酔学講座
日本歯科大学歯学部付属病院歯科麻酔・全身管理科
障害者歯科 日本障害者歯科学会雑誌. 2005 10 ; 26(4) 通号60 : 667-671


Williams症候群は、妖精様顔貌、精神遅滞、心血管系の異常などを主症状とするまれな疾患である。本症例の麻酔管理上の問題点として、挿管困難、心血管系の異常、悪性高熱症が挙げられる。

患者は13歳男児。多数歯う蝕を主訴に、中等度の大動脈弁上狭窄、妖精様特異顔貌(小下顎症、広い前額、厚い口唇)、精神遅滞、低身長、低体重で、鼠径ヘルニアが認められた。患者は頻回の通院が困難なため、全身麻酔下に治療を計画した。

麻酔はプロポフォール50mgおよびスキサメトニウム40mgで導入し、気管挿管を行った。維持はプロポフォール(5〜8mg/kg/時)、酸素(2リットル/分)、亜酸化窒素(2リットル/分)で行った。治療内容は、抜歯術、保存処置、予防処置であり、術中の循環動態は安定していた。処置時間1時間35分、麻酔時間3時間5分で、術後合併症はなかった。

ファイバースコープを準備し、Dye Densitogramアナライザーを用いて循環をモニターし、プロポフォールによる麻酔維持を行うことで、良好な管理を行うことができた。

本症候群においては、行動管理上、日帰り全身麻酔下歯科治療が有用と考えられた。

(2006年1月)



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