Williams症候群患者の歯科治療時の全身麻酔経験
齋田 菜緒子、福田 謙一、長束 智晴、金子 完子、高北 義彦、一戸 達也、金子 譲
東京歯科大学口腔健康臨床科学講座 歯科麻酔学/口腔顔面疼痛学分野(水道橋病院)
東京都立心身障害者口腔保健センター
東京都立豊島病院歯科口腔外科
東京歯科大学歯科麻酔学講座
日本歯科麻酔学会雑誌 2005 ; 33(5) : 734-735
U.症例
31歳、女性、身長146cm、体重50.8kg、小妖精様顔貌(elfin face)を呈していた。染色体検査(FISH法)によってWilliams症候群と診断されていた。胸部X線写真ではCTR 69%(Fig.1)、心電図では心房細動がみられた。心エコーでは僧帽弁逸脱症を伴った僧帽弁閉鎖不全・左心室肥大・大動脈弓形成不全がみられ慢性心不全であり、NYHA分類ではU度であった。駆出分画(ejection fraction) 55%、常用薬としてアスピリン100mg、4%フロセミド細粒、バルサルタン 40mg、塩酸ベラパミル 40mg、ランソプラゾール 30mg、酸化マグネシウム 1.5gを内服中であった。患者は僧帽弁閉鎖不全症に対する手術を行うにあたり、感染性心内膜炎の予防のため事前に智歯抜歯、う蝕処置を行う必要性を指摘されたが、精神発達遅滞を伴い通常の歯科治療に対する協力が得られず、かつ短期間での集中治療の必要性があったため、入院下での全身麻酔下歯科治療が予定された。循環器科主治医の指示により、カロリー、水分、塩分の摂取量はおのおの1,200kcal/day、800ml/day、7g/dayと制限された。術前の血液検査値に特に異常はみられなかった。
(2006年1月)
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