ウィリアムス症候群における顔貌と不正咬合



辻 美千子、大山 紀美栄、石井 紀子、黒田 敬之
東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科顎顔面矯正学分野
日本臨床遺伝学会第24回大会 抄録
臨床遺伝研究 Vol 22 No 1、 2001年3月 115ページ

ウィリアムス症候群の臨床的診断に際して妖精様顔貌(elfin facies)は重要な特徴の1つとして挙げられる。最初に本症候群においてelfin faciesという表現を用いたのは、1964年のGarciaらで、広い前額、内眼角贅皮、鼻根部平坦、厚い口唇をその特徴としている。現在では更に、腫れぼったい眼瞼、上向きの外鼻孔、長い人中、鋭角に伸びた口角、開咬、小下顎が加えられ表現される場合が多い。このような顔貌は正常から多少逸脱した子供っぽい可愛い印象を与え、また柔和な大人しい性格と相まって、“小妖精elf”のイメージにつながると思われる。この顔貌の特徴は骨格的な上下顎骨の不調和が大きく関与しており、著しい上顎前突をひきおこし、咀嚼障害を生じていることについてはあまり知られていない。当科に来院した2症例も、骨格的な上下顎の不調和に加えて、多数歯の先天欠如等の歯科的問題を抱えていた。今回はこれらの症例の顔貌・口腔内所見とともに頭部X線規格写真分析から得られた骨格的不調和の特徴を経年的資料に基づいて分析したので報告する。また、この種の患者の咬合改善にあたっての考慮すべき問題点を提示してみたい。

(2006年4月)



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