ウイリアムズ症候群患児に見られた歯科的特徴
山口 登・中村 由紀・野中 和明
(九大・院歯・小児口腔医学)
増田 啓次・山座 治義・祐田 京子
(九大・病・小児歯)
小児歯科学雑誌 Vol 48 No 1、 2010年 190ページ
緒言:
ウイリアムズ症候群は、成長障害、神経発達遅滞、妖精様顔貌、特異性格および大動脈弁上狭窄を特徴とする疾患である。常染色体優性遺伝で7番染色体長腕11.23に欠失がある。従来の歯科的異常に関する報告では、不正咬合、高い齲蝕罹患率、歯の形態異常および形成不全などがある。本症例で見られた同症候群の歯科的特徴および臨床的対応について報告する。
症例:
初診時年齢1歳3か月の男児。1歳時、九大病院小児科の染色体検査により、ウイリアムズ症候群と確定診断された。歯の形成不全の精査および齲蝕予防管理のため同小児科より紹介受診となった。顔貌所見として、腫れぼったい目、垂れ下がった厚い下口唇、常に口は開いていた。口腔内所見として、エナメル質形成不全を認め、部分的に初期齲蝕となっていた。また、上顎乳中切歯部歯間離開、上唇小帯高位付着、前歯部反対咬合が認められた。全身的には、肺動脈狭窄、精神発達遅滞が認められた。家族的に特記事項はない。齲蝕リスクテストの結果、齲蝕感受性はきわめて高いことが判明した。
経過:
初診時より定期的に口腔ケアを行なってきたが、2度にわたり受診が中断し形成不全部の初期齲蝕が進行した。フッ化ジアミン銀溶液塗布、修復処理および上顎乳中切歯の抜歯後、定期的な口腔ケアを強化している。
考察:
本症例で見られた歯科的所見は、従来の報告とほぼ一致していた。中でも齲蝕感受性が高い傾向にあることが確認できた。そのため口腔内が感染源とならないように、注意深く定期的管理を継続していく必要がある。
(2010年7月)
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