Williams症候群患児に対する歯科治療経験
丸谷 由里子、日野 綾子、小松 偉二、山田 亜矢、福本 敏
東北大・院・小児歯
小児歯科学雑誌 第52巻第1号 2014 119ページ
【諸言】
Williams症候群は、成長障害、精神運動発達遅滞、妖精用顔貌、心血管系奇形特徴とする先天性奇形症候群である。ひとなつっこい性格を示し、言語表出に優れる一方で、聴覚過敏を効率に認め、不安症も生じやす。歯科的所見として、不正咬合、歯の形態異常、形成不全、高い齲蝕罹患率などの報告がある。今回、Williams症候群患児の口腔内所見、歯科治療経過について報告した。
【症例】
初診時年齢:7歳6か月女児
主訴:口腔内管理希望
既往歴:
Williams症候群、大動脈弁上狭窄、大動脈弁逆流、鼠径ヘルニア
現病歴:
近医にて定期健診を受けていたが、永久歯の萌出に伴い、大学病院での口腔内管理を勧められ、当科を受診した。
口腔内所見:
口腔衛生状態不良、乳臼歯部隣接面齲蝕、前歯部反対咬合
治療:
口腔衛生指導・PMTCから処置を始め、第一大臼歯フィッシャーシーラント、乳臼歯部コンポジットレジン充填の順に進め、全7回で処置を終えた。
【考察】
Williams症候群に高頻度に認められる聴覚過敏に対する対応に苦慮した症例であった。バキュームや切削器具の音に抵抗を示したが、患児を落ち着かせるため、数を数えながら、少しずつ切削するという方法が有効であった。
Williams症候群患者にみられる歯科的異常として、歯の先天欠如や形態異常、形成不全、矮小歯などの報告があるが、本患児においては、上顎側切歯の先天性欠如が疑われ、また、永久切歯近遠心幅径が小さいという所見が認められた。反対咬合であるため、今後、咬合誘導を含めた口腔管理を行っていく予定である。
(2014年7月)
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