もやもや病を併発したWilliams症候群児の歯科的管理
清水結花、古屋吉勝、井出正道、朝田芳信
鶴見大学・歯・小児歯
小児歯科学雑誌 VOL.53 No.2 324ページ 2015
Williams症候群は、常染色体優性遺伝病と考えられている。身体的特徴として、成長障害、精神発達遅滞、妖精様顔貌、人なつっこい性格、大動脈弁上狭窄をはじめとする心血管系奇形症候群である。一方、もやもや病(ウィリス動脈輪閉鎖症)は両側内頸動脈終末部に慢性進行性の狭窄を生じ、側副路として脳底部に異常血管網(脳底部もやもや血管)が形成される原因不明の脳血管障害である。脳血管造影検査でこれらの血管が立ちのぼる煙のようにもやもやと見えるためこの病気がもやもや病と名づけられた。本疾患の小児例では過呼吸を伴う動作によって誘発される脳虚血性発作が典型である。今回我々はWilliams症候群にもやもや病を併発した症例を経験したのでその歯科的管理の経過について報告する。
(2015年11月)
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Williams症候群児の歯科的管理
古屋吉勝、清水結花、青山友紀、井出正道、朝田芳信
鶴見大学・小児歯科学講座
鶴見歯科 第41巻 第2号 70ページ Sep-2015年
【諸言】Williams症候群は心臓疾患、特徴のある顔貌、人なつっこい性格、聴覚過敏、知的障害、視空間認知の障害などが伴う症候群である。今回我々はWilliams症候群にもやもや病を併発した症例を経験したので、その歯科的管理の経過について報告する。
【症例】患者:2006年4月2日生。男児。初診:2011年11月15日(5歳7か月)。主訴:齲蝕治療希望。神奈川県立こども医療センターより紹介。既往症:Williams症候群、精神遅滞を伴う自閉症、肺動脈狭窄、中耳炎、熱性けいれん。
【処置と経過】肺動脈狭窄既往があるためこども医療センターへ問い合わせたところ、感染性心内膜炎の予防薬は必要なしとの報告を受けた。2012年1月16日からおよそ6か月で5回の治療を行った。1回目の治療はレストレイナー下でコンポジットレジン修復を行った。タービン使用時に泣いたが号泣することはなかった。2回目の修復処置時にはレストレイナーを使用したが泣くことはなく協力的だった。3回目の治療からはレストレイナーを使用せず修復処置が可能となった。6回目の治療時には右下6番のシーラント填塞を行う予定だったが前日の雷で意識を喪失し小児神経科を受診したとのことで検査のみ行った。その後、小児神経科よりもやもや病と診断され、しばらく歯科治療は控えるよう医師からの指示があり通院を中断した。失神はもやもや病に起因した脳の虚血によるものと考えられた。2012年10月29日、2013年1月23日に脳に血管を自家移植する手術を行い、もやもや病は感知した。2013年2月20日より、当科にて管理を再開。第一大臼歯のシーラント填塞、左上のAの抜去を行い、定期検査を継続している。患児の治療の受け入れは良好で、口腔清掃状態も良好に保たれており、齲蝕の新生は認めない。
【考察】Williams症候群児は精神発達遅滞を有し、また心疾患を伴う事が多く、歯科治療時には特別な配慮が必要である。そのためWilliams症候群児の歯科的管理では予防が重要となる。本患児は初診時に齲蝕が発生し手おり保護者の口腔衛生に対する意識が不足していたと考えられるが、的確な治療と指導を行い定期的な歯科的管理を行うことによって、新たな齲蝕の発生は抑制された。今後も口腔内の健康を保持できるよう、本患児を定期的に管理していく予定である。
(2016年4月)
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