機能性の下顎偏位を伴うWilliams症候群患者における形態的・機能的所見
岸川 明子、竹下 信郎、福永 智広、山本 照子
東北大学大学院歯学研究科額口腔矯正学分野
日本矯正歯科学会大会(第74回) 2015.11.18-20 P311
【目的】
Williams症候群は、妖精様顔貌、先天性心疾患、低身長、精神遅滞、聴覚過敏、および歯の形成異常を伴う症候群であり、染色体7q11.23領域の欠失が原因である。今回、過去に報告のない、前歯部早期接触による機能性の下顎偏位を伴うWilliams症候群の患者を経験したので報告する。
【症例】
初診時年齢は6歳10か月の女児であり、反対咬合および食物をよく噛めないことを主訴として当科を受診した。大動脈弁上狭窄症の既往があり、また、妖精様顔貌を認めた。さらに、精神遅滞および聴覚過敏が認められた。正貌は下顎の左側偏位が認められ、横貌はconcave typeであった。Terminal planeは両側mesial step typeであり、overjet、overbiteはそれぞれ-1.5mm、2.1mmであった。上下顎前歯部に空隙歯列を認め、上下顎中切歯は唇側傾斜が認められた。また、上顎両側側切歯の先天欠如および上下顎両側中切歯、下顎左側側切歯にエナメル質形成不全を認めた。さらに、上下顎右側中切歯は早期接触し、これよる機能性の下顎左側偏位が認められた。セファロ分析の結果、骨格性T級、high mandibular angleであった。顎機能所見としては、最大開口量は43.7mm、側方限界運動時の平衡側下顎頭の移動距離は、右側運動時7.1mm、左側運動時4.9mmであった。
【考察およびまとめ】
本本例ではWilliams症候群に特徴的な顎口腔顔面所見に加え、下顎の機能性の偏位が認められ、これにより左右非対称な顎運動が生じていると考えられる。このため、本症例では矯正歯科治療による形態的な変化とともに、顎機能の変化に注目した評価が必要である。今後の治療方針としては、上下顎右側中切歯の早期接触を除去し、機能性の下顎偏位の改善を図る。
(2017年2月)
目次に戻る