視覚脳が生まれる
「乳児の視覚と脳科学」という副題がついた単行本の中(9章:視覚発達の可塑性、3節:脳損傷あるは初期の脳の異常な構造は視覚システムに補償的な変化をもたらすのか)でウィリアムズ症候群が取り上げられています(214〜228ページ)。資料番号3-7-08や3-7-09の著者が原作者です。下記抜粋はその一部(216〜218ページ)です。この本は野田満さんに教えていただきました。
関連する目次は下記の通りです。
3.異常な脳の発達 − ウィリアムズ症候群のケース
4.ウィリアムズ症候群の視覚発達および認知発達
(1)仮説1:視覚障害(visual deficits)と空間障害(spatial deficits)は深く関係している
(2)仮説2:背側経路(dorsal stream)の損傷
● 運動と形態のコヒーレンス
● レターボックス課題 − 方位のマッチングとポスティング
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視覚脳が生まれる
J.アトキンソン著、金沢 創・山口 真美 監訳
(株)北大路書房 発行 2005年9月
ISBN4-7628-2468-2
彼らについてのシステマティックな追跡研究により、以下のことがわかった。すなわち、暦年齢ではなく言語的IQが相当する年齢の標準でみても、およそ半数が、標準発音テストおよび標準両眼視テスト(TNOおよびラング)での得点が低く、また屈折が年齢に比して著しく悪く、視力も年齢の標準を下回っていた。興味深いことに、彼らの屈折異常のほとんどが近視ではなく遠視であり、そのことは神経学的にリスクのあるグループは正常眼視が遅れる可能性があるという知見を指示している(健常児では正常眼化が完成すると考えられている6歳という年齢を、グループの大部分の子供たちはすでに過ぎていた)。
上記の子どもたちに対して多くの視空間的な課題が行われた。その中には私たち独自のアセスメントバッテリーからのものもあったし、また標準的な小児科学のテストからのものもあった。図9.8の例は、空間領域における彼らの困難さを示すために行われた空間能力を測る2つのテストの結果と暦年齢の関係を示している。グループ内でも能力の幅は大きく、ある子どもたちは他の子どもたちよちずっと大きな問題を示しているように見える。
ブロック構成課題とWPPSIの組み立て課題の両方の結果により(図9.8)、多くの場合、WSの子どもたちは健常児の4歳の水準を超えることはないということが示されている。WSの子どもに特徴的な行動の基礎となっている、脳の発達の違いに関して、いくつかの神経学的な仮説が考えられているが、それらについて以下に簡単に論じる。
(2005年10月)
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