発達障害児の睡眠障害
神山 潤
東京北社会保険病院
日本小児神経学会総会プログラム・抄録集
脳と発達 36巻 総会号 S96ページ(2004年7月15日-17日)
精神遅滞を有する小児では約80%の児が睡眠覚醒リズム障害を呈する(Jan and O’Donnell, 1996)。また睡眠潜時の延長、夜間覚醒の増加、夜間睡眠の減少、早朝覚醒は特に年少の自閉症での特徴的な所見といわれている(Richdale and Prior, 1995)。注意欠陥多動性障害では、就床困難、夜間覚醒、早朝覚醒がしばしば指摘される。一部には睡眠障害が原因で、日中に集中力を高めることが困難となる場合もあり、その場合には睡眠の改善が覚醒時の症状改善に重要となる。そのような例の正確な頻度は不明だが、睡眠呼吸障害例(Chervinら,2002)、さらには周期性四肢運動障害やむずむず足症候群で知られている(Shores,2001)。前者にはアデノイド扁桃摘除術が有効で、後者にはドパミン製剤が有効なことがある。ジルドュラチュレット症候群でも睡眠に関する悩みが多く、睡眠が断片化(Kohrman and Carney,2000)し、中途覚醒が増加し睡眠潜時が延長する(Drakeら,1992)。強迫性障害の思春期疾患で夜間の睡眠が断片化し、睡眠の質が低下しているとする報告もある(Rapoportら,1981)。Down症候群では閉塞性睡眠時無呼吸に加え、脳幹部由来の中枢性無呼吸も生ずる。Prader-Willi症候群では日中の過睡は必発症状で、さらに肥満、筋緊張低下に基づく閉塞性睡眠時無呼吸や、成因不明の中枢性無呼吸が見られ、レム睡眠期主体の酸素飽和度の低下が生じる。しかし睡眠呼吸障害を欠いても日中過睡を呈する場合もあり、視床下部由来の原因も推定されている。(Hiroeら,2000;Nixon and Brouillette,2002)。Angelman症候群では、睡眠覚醒リズムの異常や夜間睡眠の減少、中途覚醒増加をしばしば認める。Smith-Magenis症候群では60%を越える例でいびきや日中過眠の訴えがある。(Smithら,1998)。顔面中部の低形成を考慮すると睡眠呼吸障害が存在する可能性は高いことが予想されている。また、入眠困難、睡眠の持続の困難、レム睡眠の減少も報告されている(Brooks,2002)。Williams症候群では入眠や睡眠の継続に問題があることに加え、対照よりも中途覚醒が長く、周期性四肢運動の頻度が高い。Rett症候群では就床・起床時刻が不規則で日中の睡眠が多い。
(2006年8月)
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