ウィリアムズ症候群において睡眠脳波フィンガープリントが視床皮質振動ダイナミクスを促進することが明らかになった



Sleep EEG fingerprints reveal accelerated thalamocortical oscillatory dynamics in Williamssyndrome

Robert Bodizs(ab, Ferenc Gombos(b, Ilona Kovacsb(c,
a)Institute of Behavioural Sciences, Semmelweis University, Nagyvarad ter 4, Budapest, Hungary
b)HAS-BME Cognitive Science Research Group of the Hungarian Academy of Sciences, Egry Jozsef u. 1, H-1111, Budapest, Hungary
c)Department of Cognitive Sciences, Budapest University of Technology and Economics, Egry Jozsef u. 1, H-1111, Budapest, Hungary
Research in Developmental Disabilities ; Volume 33, Issue 1, January-February 2012, Pages 153-164

睡眠脳波の変異はいくつかの発達障害において最近明らかになった特徴であるが、ウィリアムズ症候群(WS、7q11.23領域の微少欠失)患者の睡眠表現型に関して脳波の詳細な定量的データは採取されていない。研究室(研究T)および自宅における睡眠記録(研究U)をもとに、8-16Hzの前後方向ノンレム睡眠脳波のパワー分布パターンのウィリアムズ症候群に関連する特徴を報告する。研究Tの参加者は9人のウィリアムズ症候群患者と、性別と年齢(14-29歳)を一致させた9人の正常に発達した対照群であり、研究室で連続して二晩睡眠をとった。ウィリアムズ症候群の被験者は脳波パワーに関して、10.50-12.50Hzでは領域にかかわらず減少がみられ、14.75-15.75Hzでは中央が増加する特徴があった。スペクトルのZスコアは、10.25-12.25Hzと14-16Hz領域においてそれぞれ減少と増加した。さらに、ウィリアムズ症候群被験者の脳波スペクトルにおいては前頭部優位性(frontally dominant)のピークの発生を観察する確率が低下している。頭頂部のfast sigma peakとパワー分布の前後方向シフトがウィリアムズ症候群被験者のほうが周波数が高い(-1Hzの差)。1年間経過観察した9人のウィリアムズ症候群被験者と3人の正常に発達した対照群を大きなグループ(20人のウィリアムズ症候群患者と20人の正常に発達した対照群、年齢は6-29歳)に加えて、2日間自宅で携帯型睡眠ポリグラフを使った検査を行ったところ、ウィリアムズ症候群に特有のアルファー波/low sigma power(8-11.75Hz)の減少と、Zスコアの差異(減少:8.50-11.25Hz;増加:13.5-14Hz)が確認され、これにはパワー分布の前後方向シフト(0.5 Hz)とスペクトルピークにいくつかの特徴が含まれている。これらのデータはウィリアムズ症候群においてアルファー波/low sigma powerの減少と共に、8-16Hzの前後方向ノンレム睡眠脳波のパワーが周波数の高いほうに再分布し、ノンレム睡眠視床皮質振動の周波数がより高くなることを示唆している。

(2011年12月)



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