ウィリアムズ症候群における行動と記憶と睡眠覚醒とメラトニン間の関係
Correlations between behavior, memory, sleep-wake and melatonin in Williams-Beuren syndrome.
Santoro SD(1), Giacheti CM(1), Rossi NF(1), Campos LM(2), Pinato L(3).
Author information:
(1)Sao Paulo State University-UNESP, Marilia, SP, Brazil.
(2)Sao Paulo State University-UNESP, Marilia, SP, Brazil; Medical School, University of Marilia-UNIMAR, Marilia, SP, Brazil.
(3)Sao Paulo State University-UNESP, Marilia, SP, Brazil. Electronic address: lpinato@marilia.unesp.br.
Physiol Behav. 2016 Mar 11;159:14-19. doi: 10.1016/j.physbeh.2016.03.010. [Epub ahead of print]
ウィリアムズ症候群は神経発達障害であり、染色体7q11.23領域の微小欠失を原因とする。この症候群は行動と認知神経科学的な面で独特の表現型を示す。特に社会的能力やコミュニケーション能力が明らかに維持されている一方、対照的に全体的な認知能力、特に視空間機能が低い。加えて、両親からはしばしば睡眠障害や原因不明の行動問題の訴えがある。睡眠は生物学的現象であり、メラトニンの血漿中濃度によって調節されており、行動面や記憶に影響を与える。そこで、本研究では、ウィリアムズ症候群における行動と記憶と睡眠障害の存在を調査し、各要素間の関連、そして血漿中のメラトニン量との相関を探索する。6歳から18歳向けの子ども用行動チェックリスト(Child Behavior Checklist,CBCL)、聴覚記憶向けのウェクスラー検査(Wechsler scale)の数字サブテスト、を使用し、ITPA言語学習能力診断検(Illinois Test of Psycholinguistic Abilities)子ども用睡眠障害検査(Sleep Disturbance Scale for Children (SDSC))を使用した。72時間にわたって酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)でメラトニンの尿中代謝物(aMT6s)を定量することで血漿中のメラトニン量を間接的に測定し、コサイナー法を使ってこの濃度の日周性リズムの分析を行った。子ども用行動チェックリストからはウィリアムズ症候群グループの87%で、総合能力(overall competence)の臨床成績と総行動障害がみられた。さらに、両親から最も多く報告された行動問題は不安症と思考の問題であった。ウィリアムズ症候群の患者全員に聴覚記憶の障害があり、47%は視覚配列記憶に障害があった。ウィリアムズ症候群グループの65%は少なくとも一種類の睡眠障害の兆候を示し、呼吸・入眠・睡眠の維持(DIMS:一過性不眠)や多汗症が最もよくみられる問題である。ウィリアムズ症候群患者は対照群に比べて夜間のメラトニン尿中代謝物レベルが低い。ウィリアムズ症候群グループの53%はメラトニン尿中代謝物レベルの日周性リズム変動が見られない。加えて、聴覚記憶の成績と睡眠障害の総合成績の間、および一過性不眠と夜間のメラトニン尿中代謝物量の間には負の相関がある。本研究の結論として、ウィリアムズ症候群患者は行動や記憶の障害、睡眠障害、メラトニン尿中代謝物レベルのリズム変動がないなどの症状を呈する割合が高い。メラトニン量が低いことはこの集団の睡眠障害を関連している可能性があり、続いて記憶のような特定の認知機能に有害な影響を与える可能性がある。
(2016年3月)
目次に戻る