ウイリアムス症候群における治療可能な精神医学的疾病



Treatable psychiatric disorders in Williams Syndrome

S. Correia(1), R.Weksberg(2),T.Costa(2), K.A.Hodgkinson(1), A.S.Bassett(1)
(1):Schizophrenia Research Program, Queen Street Mental Health Center
(2):Hospital for Sick Children, Toronto, Ontario, Canada
アメリカ人類遺伝学会 1997年 年次総会 抄録 臨床遺伝:奇形と変形 No.527

ウイリアムス症候群(WS)は7番染色体長腕(7q)の欠失に関係する隣接遺伝子症候群で ある。この症候群のバラエティにとんだ表現型には、循環器系疾患・特徴的な容貌・精神遅 滞(MR)・聴覚過敏症・多弁等が含まれる。ウイリアムス症候群の子供の場合は、落ち着きの 無さ・集中力欠如・過度の不安・夢中になる等という症状を伴う。これらは、重大な機能障 害や治療可能な不安症候群(anxiety disorders)の症状を伴うこともある。しかし、ウイ リアムス症候群の精神医学的疾病に関する合併症の病理学的文献は少ない。本論文では、ウ イリアムス症候群と精神医学的疾病を併せ持つ3人の患者(現在の平均年齢は26.3才、診 断時の年齢は2才、4才、29才)について報告する。遺伝子診療科から紹介されてきたエ ラスチン遺伝子の欠失を伴ったウイリアムス症候群の患者は、精神医によってDSM-IV分類 を用いた精神医学疾病の評価を受けた。精神遅滞は境界線上にあり、中程度から重度である。 3人は一般不安症(Generalized Anxiety Disorder)と診断された。臨床的症状は、不安・ いらいら・機嫌が変わり易い・感情の爆発等である。合併症の病的状態は、ある患者では自 閉症と強迫観念症状を示し、別の患者ではウイリアムス症候群に起因する精神障害 (Psychotic Disorder)、鬱傾向と恐怖発作症状(panic attack symptoms)が見られた。 少量から平均的投薬量の範囲の選択的セロトニン再吸収阻害剤(selective serotonin reuptake inhibitors:SSRIs)を処方された。これは不安症候群に効果があることがわか っている。患者には急激で顕著な臨床的及び機能的改善が見られ、9段階の機能テストの全 体的評価(Global Assessment of Functioning scale)において、平均1.7改善した。不 安・いらいら・感情の攻撃的な爆発・夢中等が減少した。行動訓練や職業訓練プログラムへ 参加できるまでに、集中力や社会的能力も改善した。合併症の精神異常は普通の抗精神病投 薬を少量投薬することで治療しており、症状の改善が見られる。これらの知見から、ウイリ アムス症候群の表現型には精神医学的疾病、特に不安症候群が含まれていると考えられる。 典型的な症状と投薬に対する反応から、ウイリアムス症候群の病因にセロトニン系が含まれ ていることを示すとともに、SSRIsのランダム比較試験を含むウイリアムス症候群の精神医 学的疾病についてさらに研究する必要性も示唆している。

(1998年3月)

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