特殊な集団における単語習得:
ウイリアムス症候群の患者は語彙制約に拘束されるか?


Word learning in a special population:
do individuals with Williams syndrome obey lexical constraints?

Stevens T, Karmiloff-Smith A
University College London. UK
J Child Lang 1997 Oct; 24(3): 737-765

希少神経発達障害病としてのウイリアムス症候群(WS)は、言語−認知機能の能力と障 害がアンバランスであることから心理言語学者達の興味を集めている。ウイリアムス症候群 の青年や成人の能力の中で明確になっている特徴の一つに、普通には見られない語彙の豊富 さがある。他の分野の重大な障害とは無関係である。この論文では、語彙の量に注目するの ではなく、語彙を習得するプロセス、すなわちどのようにして新しい単語を覚えるかについ て調査した。

ウイリアムス症候群のグループと、精神年齢が同じになるように選択された3才から9 才の正常な対照グループに対して、学習単語の制約を調査する4種類のテストが実施された。 新しい単語の意味を解釈する際に、正常な子供達は年齢にかかわらずすばやく理解 (mapping)し、制約規則すなわち相互排他規則や全体的あるいは分類的制約規則(mutual exclusivity, whole object and taxonomic)を守ることが示された。それとは対照的に、 ウイリアムス症候群のグループはすばやく理解(mapping)し相互排他規則は守るけれども、 全体的あるいは分類的制約規則には従っていないことが示された。

この結果は、語彙の多さだけの測定ではウイリアムス症候群の人の言語能力の正常さの 判断を誤ることを示している。語彙テストから得られた年齢のように行動面から見て同等で も、ウイリアムス症候群の人の語彙習得プロセスは普通の子供達とは少し違っていること、 そして、変則的に発達した脳が必ずしも正常な発達を調べる手段にはならないことを、この 研究の結果が示している。

(1998年4月)

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