フェティシズムを呈したウィリアムズ症候群の一例
野口正行、加藤 敏(自治医科大学 精神医学教室)
精神神経学雑誌(2000) 102巻 12号:1265-1266
ウイリアムズ症候群は小妖精様顔貌、大動脈弁上部狭窄症、精神発達遅滞(IQ 50〜60程度)などの症状を呈するまれな先天性疾患である。原因は第7番染色体長腕の部分欠失による遺伝子の微小欠失であることが確認されている。今回われわれはフェティシズムを呈した本症候群の一例を経験した。他の先天性疾患による精神発達遅滞を含めて、本症例のようにフェティシズムを合併した例は今までになく、きわめてまれな症例であると考えられるためここに報告した。
(2004年4月)
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上記と同じと思われる症例の詳細な報告が同じ雑誌に掲載された。
(2005年1月)
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A case of Williams syndrome who exhibited fetishism
野口正行、加藤 敏
佐野厚生総合病院 精神神経科
精神神経学雑誌.(2004)106巻10号:1232-41.
ウィリアムズ症候群は稀少先天性障害であり、第7染色体にある遺伝子座の微小欠失が病因である。今回、3歳時点でウィリアムズ症候群と診断された22歳の男性の症例を報告する。子ども時期のこの患者は、多動・注意欠陥・過度のなれなれしさなど同症候群の典型的な行動特性パターンを呈した。また同児は工事車両や遊技場や手袋などに恒常的な興味を示した。同児はテレビドラマのヒロインが手袋をはめて暴漢と戦う場面を見て以来手袋に興味を持つようになった。19歳のときにポルノ映画を見ることで、手袋に強い性的な意味づけを感じるようになった。それ以来、手袋を奪う目的で手袋をはめた女性を四度襲った。本論文はウィリアムズ症候群の独特の認知プロフィールと本事例でフェティシズムを生じさせた環境的要因の両面を議論する。
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