ウィリアムズ症候群における相貌認知探索に関する討論:発達軌跡を作り上げることの重要性
Exploring the Williams syndrome face-processing debate: the importance of building developmental trajectories.
Karmiloff-Smith A, Thomas M, Annaz D, Humphreys K, Ewing S, Brace N, Duuren M, Pike G, Grice S, Campbell R.
Neurocognitive Development Unit, Institute of Child Health, London, UK.
J Child Psychol Psychiatry. 2004 Oct;45(7):1258-74.
背景:ウィリアムズ症候群における相貌認知は最近10年間熱い議論が行われてきた。正常に発達した(無傷の)相貌認知モジュールに関する主張は、ウィリアムズ症候群患者の行動スコアが正常範囲に入っていながら、対照群とは異なる認知プロセスのバランスの上に成り立っているというデータによって検証が必要になった。誘導脳電位の測定によっても異型プロセスの存在が示された。しかし、最近行われた研究は、ウィリアムズ症候群の患者も正常な人とまったく同じ方法で相貌認知を行っていると主張している。
方法:本論文では3種類の相貌認知実験の基礎に関して行われている議論の詳細を検証する。特に、我々が行った2種類の実験については、課題特異的で完全な幼児から青年期/成人期までの発達軌跡を作成し、ウィリアムズ症候群データをその軌跡の上にプロットした。
結果:最初の実験は人の実物顔写真を使用した。各グループとも同様の正確性を示す一方で、ウィリアムズ症候群の被験者は、写真が正立状態の場合の構成処理成績が悪く、顔が逆向きになっていることには鈍感である。物語形式における相貌認知能力を測定する実験2では、対照群では逆向きの顔の影響が明確に現れるのに対して、ウィリアムズ症候群の発達軌跡においてのみその効果は弱い。対照群とは異なり、Benton相貌認知検査(the Benton Face Recognition Test)とパターン構築の成績間に相関がなく、この2つのグループ間の発達パターンの違いを浮き彫りにしている。さらに対照群とは異なり、模式的な顔や顔ではない刺激に関する実験3によって、暦年齢やBenton検査の成績レベルから見て、ウィリアムズ症候群の患者の構成処理の障害が明らかになった。
結論:この発見はウィリアムズ症候群における相貌認知に関する発達の遅れと逸脱を指摘し、個別に課題それぞれに対して発達軌跡を作成することがいかに重要かを浮かび上がらせた。
(2004年9月)
目次に戻る