嫌悪、自覚と誘因:ウィリアムズ症候群表現型における聴覚過敏症の訴えに関する調査
Aversion, awareness, and attraction: investigating claims of hyperacusis in the Williams syndrome phenotype.
Levitin DJ, Cole K, Lincoln A, Bellugi U.
Department of Psychology, McGill University, Canada.
J Child Psychol Psychiatry. 2005 May;46(5):514-23.
背景:
神経発達障害であるウィリアムズ症候群は比較的維持された聴覚知覚と認知と並んで広汎な認知障害を特徴とする。特定の音に魅了されたりいやがる反応がよくみられる特徴的な表現型である。これまでに公表されている報告書によれば、ウィリアムズ症候群の人々は聴覚過敏症(hyperacusis)を経験するといわれているが、詳細に調査を行った結果、これらの文献では様々な聴覚異常を記述する目的で「聴覚過敏症」という用語を無定義に使用されていることがわかった。
方法:
ウィリアムズ症候群の人々(118人)の両親から集めたデータと、ダウン症候群・自閉症などの正常な対照群などの比較グループのデータを元に、ウィリアムズ症候群の人々の聴覚異常の事例を明確にして記述した。
結果:
我々の発見によれば、現象上では4種類に区分される聴覚異常があり、それらのすべてについて、他の3グループに比べてウィリアムズ症候群で有意に患者が多い。ウィリアムズ症候群の人々について、真性の聴覚過敏症(小さなな音に対する閾値が下がる)や音への愛着や固着(auditory fascinations/fixations)があるという報告は比較的少ないこと、一方で、個人別の特有の音に対する恐怖感は80%が報告し、不快に感じる音の大きさのレベルが下がっていること、すなわち騒音耳痛(odynacusis) は91%で報告があった。
結果:
この調査の結果によれば、ウィリアムズ症候群における異常な聴覚表現型に関する逸話的な報告が確認され、ウィリアムズ症候群の聴覚知覚や病理学の本質を理解するための重要な基礎情報が集まった。我々は今回得られた知見を、ウィリアムズ症候群の人々に関して最近発見された神経解剖学的・神経生理学的事実に対する拡張あるいは補完するものとして検討を行った。
(2005年5月)
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