ウイリアムズ症候群児における視空間認知障害の特徴 ― 構成課題における検討 ―
資料番号3−9−112、3−9−127と関連する内容です。
(2006年5月)
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本間 朋恵 1) 、仙石 泰仁 2)、中島 そのみ 2)、富田 英 3)、 舘 延忠 2)
1)札幌医科大学 大学院 保健医療学研究科
2) 札幌医科大学 保健医療学部
3) 札幌医科大学 医学部 小児科学講座
作業療法 24巻 特別号 2005年5月、93ページ
【はじめに】
ウイリアムズ症候群は第7染色体の遺伝子欠失による隣接遺伝子症候群で、精神運動発達遅滞、心血管系異常、視空間認知障害などの臨床症状を示す。視空間認知障害の評価では積木構成課題が劣るとされており、我々も第38回日本作業療法学会においてWISC-V知能検査法(以下、WISC-V)の下位検査である「積木模様」が低い傾向であったことを報告している。しかし、構成の仕方に関して詳細に評価している報告はほとんどなく、どのような誤り方の特徴があるかは不明確である。そこで今回、3種類の構成課題を実施し構成能力の特徴を検討したので報告する。
【方法】
対象は検査に同意が得られた6歳0ヵ月〜12歳8ヵ月のウイリアムズ症候群6名(男児1名、女児5名)で、WISC-Vの全IQは40未満〜70である。モデルと同様に立方体の積木やピースを構成する課題を行った。課題は(1) デザイン構成(WISC-Vの積木模様を用いた)、(2)三角形構成(K-ABC心理・教育アセスメントバッテリー(以下、K-ABC)の模様の構成を用いた)、(3)立体構成(日本版ミラー幼児発達スクリーニング検査(以下、JMAP)の積み木構成を用いた)の3種類である。これらは呈示されたモデルを見ながら色や形を同じに構成する課題であるが使用する物品や呈示方法が各課題で異なる。各課題における正答数および構成の仕方を症例間で比較した。
【結果】
WISC-Vの「積木模様」の評価点は1〜5点、K-ABC「模様の構成」の評価点は3〜6点で明らかな成績の低さがみられた。JMAPの「積み木の構成」では6名中2名が低年齢群の課題さえ構成できなかった。デザイン課題では全体として正方形に形作ることはできるが内部のデザインを誤り、6名中3名は斜めの配置で方向の間違いがあった。三角形構成ではピースの方向を部分的に誤る者が6名中1名いた。立体構成は全体としてはモデルと同様の配置になっているが、6名中2名は積み木間のすきまに注意を向けていなかった。各課題の正答数の関係は3種類ともに関連傾向があり、デザイン構成の得点が高い者は他の構成課題においても得点が高い傾向にあった。
【考察】
3種類の構成課題の結果から、構成の特徴として方向や間隔を誤ることが示された。先行研究では、WISC-Rの「積木模様」において部分的な構成はできるが全体的な構成はできないという誤り方をすることが報告されているが、今回の結果は全体構成はできるが内部のデザインが異なるという結果であった。特に斜めの配置での誤りが認められることから、傾きに関する視空間情報の認識もしくは保持の問題が考えられた。今後は傾きに関する視空間情報と構成能力の関連性を分析することが課題として考えられた。
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