ウィリアムズ症候群患者における正立及び倒置顔刺激に対する脳磁図反応
The magnetoencephalographic response to upright and inverted face stimuli in a patient with williams syndrome.
中村みほ、渡邊 昌子、Gunji A、柿木隆介
岡崎国立共同研究機構 生理学研究所 統合生理研究施設
愛知県心身障害者コロニー 発達障害研究所
Pediatr Neurol. 2006 May;34(5):412-4.
ウィリアムズ症候群患者における容貌認知処理について、正立及び倒置顔刺激に対する治反応に関して脳磁図を用いて調査した。正立顔刺激に対する男性患者の反応は正常な成人と変らない。しかし、倒置顔刺激に対する反応は、正常な成人の場合や、正立顔刺激に対する彼自身の反応よりも速い。この観察結果は正常な成人で通常みられる顔の逆転効果がないことを示している。
(2006年5月)
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上記論文の研究と同じ内容と推測される発表が日本小児神経学会総会で行われていました。
(2006年6月)
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ウィリアムズ症候群患者における正立及び顔の認知 −脳磁図による検討−
中村 みほ1)、渡邊 昌子2)、松本 昭子3)、渡邊 一功4)、柿木 隆介2)
1) 愛知県心身障害者コロニー 発達障害研究所
2) 岡崎国立共同研究機構 生理学研究所
3) 愛知県心身障害者コロニー こばと学園
4) 愛知淑徳大学
脳と発達 第35巻 総会号(2003.5.22-24)、S302ページ
Williams症候群はその認知分野ごとの能力のばらつきが大きいことが特徴とされている。一般に聴覚に比して視覚の認知に劣るとされてはいるが、視覚認知機能の中でも能力のばらつきは大変に大きく、視覚認知の腹側経路に比して背側経路の障害が大きいとの報告がなされている。我々もこれまで、背側経路の障害によると思われる視空間認知障害を、心理学的検査法を用いて明らかにし報告してきた。さらに脳磁計を用いて背側経路の重要な機能のひとつである運動視知覚を神経生理学的に検討することにより、視空間認知障害が運動視知覚中枢の障害によるものではないことも明らかにした。今回は臨床的に比較的障害が認められにくいとされる腹側経路に着目し、とくに顔の認知について、13才男性のウィリアムズ症候群患者を対象に脳磁計を用いて神経生理学的検討を行い、健常成人の結果と比較検討した。その結果、顔の正立像刺激に対しては顔の認知に関わる領域とされるfusiform gyrus周辺に反応部位が推定され、その潜時は健常成人と差を認めなかった。それに対して、顔の倒立像刺激に対しては健常成人と異なる反応を示した。すなわち、健常成人では倒立像に対する反応潜時が正立像のそれに比して遅れる(倒立効果)のに対して、本患者では反応潜時の遅れは見られず、倒立効果を認めなかった。以上により、比較的障害が認められにくいとされる視覚認知腹側経路においても、通常と異なる認知処理が行われている可能性が示唆された。文献検索により健常小児における顔認識の発達の要素も加味したうえで考案を加えたい。なお、本研究は、十分なインフォームドコンセントのもと、愛知県身障者コロニー発達障害研究所および、岡崎国立共同研究機構生理学研究所における倫理審査を経て実施された。
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