傾き符号化能力:ウィリアムズ症候群に障害があるのか?
Orientation coding: a specific deficit in williams syndrome?
Farran EK.
School of Psychology and Clinical Language Sciences, University of Reading, England.
Dev Neuropsychol. 2006;29(3):397-414.
ウィリアムズ症候群は希少遺伝子疾患であり、視空間能力に比べて言語能力が優れているという独特な認知プロフィールを有する。本研究はウィリアムズ症候群の視空間能力の中でも傾き符号化能力に特定の障害があるという主張について調べる。実験1は簡易版ベントン線分傾き判断課題(Benton Judgement of Line Orientation task)と対照実験として長さ一致課題(length-matching task)を実施した。その結果、ウィリアムズ症候群のグループは非言語能力を一致させた正常に発達した対照群に匹敵する成績を示した。ただし、床効果(floor effect)によってグループ間の相違が隠された可能性がある。長さ一致課題では対照群のほうが優れた成績を示すという形でグループ間の差がみられた。実験2は傾き弁別課題(orientation-discrimination task)と長さ弁別課題(length-discrimination task)を実施した。これまでの報告とは反対に、ウィリアムズ症候群の人の傾き符号化能力は対照群と同等であるとの結果がでた。この結果は、ウィリアムズ症候群において特定の障害があるのは事実だが、傾き符号化能力には問題がないことを示唆している。実験1と2の比較からは、傾き符号化能力が課題の複雑さに影響を受けやすいこと示唆される。しかし、再度強調しておくが、この影響の受けやすさはウィリアムズ症候群の人に限った特徴ではなく、正常に発達した対照群においても明らかに観察されている。
(2006年5月)
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