ウィリアムズ症候群における「心の理論」の発達
中村 みほ1), 松本 昭子2), 宮崎 修次2), 早川 知恵美2), 三浦 清邦3), 水野 誠司3), 鈴木 淑子3), 熊谷 俊幸3)
1)愛知県心身障害者コロニー 発達障害研究所
2) 愛知県心身障害者コロニー こばと学園
3) 愛知県心身障害者コロニー 中央病院
日本小児神経学会総会プログラム・抄録集46(2004年7月15日-17日)S192ページ
【目的】
ウィリアムズ症候群は妖精様顔貌、心血管異常、精神発達遅滞、認知能力のばらつき等の特徴に加え、対人面での特徴(過度のなれなれしさなど)が指摘されている。他人の感情に対して非情に共感が強い反面、語用論的問題をはじめとする人間関係のつまずきも時に経験され、彼等の対人面の特徴を明らかにすることは重要であると考える。従来より我々は、対人面での特徴をより客観的に評価することを目的に、「心の理論」の発達の過程に注目し、Sally and Ann Taskをウィリアムズ症候群患児らに実施して健常コントロール群と比較検討してきた。今回はその縦断的経過を報告する。
【方法】
ウィリアムズ症候群と診断された6名の男児を対象に、Tewらのクライテリアによるカクテルパーティ様のスピーチの有無を検討した。さらに、「心の理論」の検査方法のひとつであるSally and Ann Taskを継次的に実施し、その結果を精神年齢を一致させたコントロール群(3,4,5歳の保育園児計39名)のそれと比較検討した。
【結果】
全例にカクテルパーティ様スピーチの存在を認めた。「心の理論」の発達は精神年齢を合わせた健常児との差を認めなかった。また、精神年齢の増加とともに課題の通過が可能になった例を確認した。
【結論】
カクテルパーティ様スピーチに代表される語用論上の問題はある児においても「心の理論」の発達はその精神年齢にほぼ一致して認められることが確認され、ウィリアムズ症候群患児では健常者との比較において「心の理論」の発達には「遅れ」はあっても「編奇」はないことが推測された。
(2006年5月)
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