民族生物学(folkbiology)における知識の強化と概念の変化:ウィリアムズ症候群から得られた事実



Knowledge enrichment and conceptual change in folkbiology:
evidence from williams syndrome.

Johnson SC, Carey S
University of Pittsburgh.
Cognit Psychol 1998 Nov;37(2):156-200

人間・動物・植物に関する直感的な生物学的知識に関して、10人のウィリアムズ症候群 の実験参加者(平均言語精神年齢 11.5才)と、普通に発達している2つの子供達のグループ (平均精神年齢は10.11才と6.7才)を比較した。年長の対照群の参加者は、ウィリアムズ 症候群の参加者達と同じ平均言語精神年齢にしてある。生物学的理解に関するプローブは 民族生物学に関する成果を記載した出版物から抜き出されており、次のような2つの仮説 に基づく違いによって2つのテストにまとめられている。

  1. 普通に成長した小学校入学前の子供達の概念的項目と一致する一般的知識。
    (T1/T2-Neutral Animal Knowledge battery)。
  2. 6才から12才で普通に得られる民族生物学的概念。この概念を構築するためには、 人生・死・動物としての人間・動物の起源で分類される種 等の概念的変化が必要に なる。(T2-Dependent battery)
2つのテストは課題達成の条件に関しては同じになるように作成されており、調査される 概念的内容が異なっているだけである。この区別が見せかけのものであり、民族生物学的 概念が小学校入学前の知識を強化するだけで構築できるという仮説が正しければ、2種類 のテストの結果の差はグループ間で異なることは無いはずである。しかし、ウィリアムズ 症候群の人々は、 T2-Dependent battery の結果に関して障害を受けていることが判明し た。彼らは T1/T2-Neutral battery に関して年長の対照群と同じレベルの成績だったが、 T2-Dependent battery に関しては6才の対照群と同じレベルだった。これらのデータは、 2種類の概念的知識の獲得の間に違いがあることを示している。すなわち、既に獲得した 知識の上に構築できる新しい知識の獲得(強化)と、実質的な概念的変化に基づく知識の 獲得である。さらに、この人々に対して言われている「カクテルパーティ」症候群という概 念が「皮相的」かもしれないことに関する正確な特徴について、今回の結果が持つ意味に ついても議論する。

(1999年1月)



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