ウィリアムズ症候群における認知の不均一性



Cognitive heterogeneity in Williams syndrome.

Porter MA, Coltheart M.
Macquarie Centre for Cognitive Science, Macquarie University, Sydney, Australia. mporter@maccs.mq.edu.au
Dev Neuropsychol. 2005;27(2):275-306.

本研究はウッドコック−ジョンソン認知能力テスト改訂版を用いて、ウィリアムズ症候群の人々の幅広い認知能力を調査した。比較的大きな31名というウィリアムズ症候群患者のサンプルを対象としているが、ケースシリーズ手法をとった。本研究は広く信じられている特徴的な「ウィリアムズ症候群の認知プロフィール」について、均一的ではなく不均一性を探すという観点で取り組んだ。ウィリアムズ症候群の人々は、機能レベルが変化に富んでおり、維持されたレベル(精神年齢より有意に優れている)、期待されるレベル(精神年齢相当)、重度の障害レベル(精神年齢より有意に劣っている)がみられる。このような結果は、ウィリアムズ症候群の人々に認知能力の不均一性があることの明白な証拠になる。我々検査の結果、音素処理課題や音韻的短期記憶課題では、ウィリアムズ症候群被験者の半分は精神年齢相当の成績を有するという均一性がみられた。興味深いことに、非言語推論課題が苦手だったウィリアムズ症候群被験者は1人もおらず、言語理解課題が苦手だった被験者も1人だけだった。さらに、分解−統合(analysis-synthesis)と言語的類推(verbal analogies)に強みがあるのは精神年齢が5.5歳(今回のサンプルの平均年齢)以上のウィリアムズ症候群被験者だけである。精神年齢が5.5歳以上のウィリアムズ症候群被験者はこの2つの課題では精神年齢相当の成績であった。調査結果によれば、様々な認知機能に関する長所短所について、ウィリアムズ症候群内に顕著なサブグループが存在することの予備的な証拠がみられる。この知見の底辺には、ウィリアムズ症候群の患者全員に共通する一種類の認知プロフィールが存在することを仮定するのは危険であることがあげられる。ウィリアムズ症候群の患者の遺伝子や身体的異常に不均一性があるように、すべてのウィリアムズ症候群患者が同じ認知的長所と短所を有しているわけではない。さらに、すべてのウィリアムズ症候群患者が言語的能力の長所と空間認知能力の短所を有しているわけでもない。

(2007年9月)



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