ウィリアムズ症候群:この遺伝子欠失疾患は社会性に関する生物学面及び超社会性に関する臨床的誘発に関する手がかりを与える



Williams syndrome: a genetic deletion disorder presenting clues to the biology of sociability and clinical challenges of hypersociability.

Deutsch SI, Rosse RB, Schwartz BL.
Department of Veterans Affairs Medical Center, Mental Health Service Line, Washington, DC, USA.
CNS Spectr. 2007 Dec;12(12):903-7.

ウィリアムズ症候群は第7染色体のq11.23領域にある約1.5M塩基対の範囲に存在するおよそ25個から30個の遺伝子が欠失することによっておこる神経発達疾患である。この症候群の患者は特徴的な妖精様顔貌、成長遅滞、軽度の精神遅滞、不整合な認知プロフィール(顔認知は優れているが視空間認知には障害があり、表現言語能力は比較的維持されている)、循環器系異常などを併せ持つ。加えてこの症候群のきわだった特徴として患者が他者に対して見せる優れた社会性と共感能力があげられる。7q11.23にある染色体バンドに部分的欠失がある患者に関する研究から、この領域にある突然変異遺伝子とマウスの第5染色体にある相同なG1-G2領域に存在する特定の遺伝子を欠失させたノックアウトマウスは遺伝子型/表現型の関係にあることが明らかになった。さらにこの領域に存在してよく発現する遺伝子は脳とその発達に関連している。ウィリアムズ症候群患者の神経心理学的プロフィールは不均一であり、認知機能内における乖離を際立たせ、社会性や共感能力や人の気をひきつける能力や言語能力などの行動的側面は、認知機能障害とは無関係である、あるいは容易には説明できないことを示唆している。ウィリアムズ症候群にみられる高度な社会性という病理学的特徴が、統合失調症や自閉症などの主要な複合的神経精神疾患に診られる障害徴候と同じであることから、ウィリアムズ症候群は発見的学習価値が非常に高い。ウィリアムズ症候群の患者には見知らぬ他者に接近することを我慢できないという特徴が一貫して見られることから、この症候群は社会化をもたらす「力」の生物学的基盤に関する研究機会を与えてくれる。ある研究から得られる予測しとしては、この症候群は社会性が認知機能とは独立して(少なくとも分割可能な複数の認知プロセスとして)変異する次元として存在するという神経生物学的研究機会を提供している。重要なこととして臨床的な予測からは、この症候群に対して、「病理学的」社会性から得られる利点を有効に活用し、その負の面を避けるような戦略的心理学社会的治療を、我々は実践する必要がある。ウィリアムズ症候群の患者に対して行われた戦略的に計画された心理学的治療の実証例を簡単に紹介する。

(2007年12月)



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