ウィリアムズ症候群の社会的表現型を定義する:遺伝子と脳と行動の関係モデル



Defining the social phenotype in Williams syndrome: A model for linking gene, the brain, and behavior.

Jarvinen-Pasley A, Bellugi U, Reilly J, Mills DL, Galaburda A, Reiss AL, Korenberg JR.
Salk Institute for Biological Studies.
Dev Psychopathol. 2008 Winter;20(1):1-35.

神経発達疾患における表現型−遺伝子型の関係に関する研究を通して、遺伝子及び神経生物学的要素が典型的・非典型的発達における変動に与える影響を明らかにしてきた。病原学的に見て均質性が高いウィリアムズ症候群のような疾患は、遺伝子と脳と行動の関係を明らかにする研究に得がたい機会を提供している。ウィリアムズ症候群は神経発生的疾患であり、染色対7q11.23領域の約25個の遺伝子の半接合欠失を原因とする。この結果、身体面、認知行動面、情動面、神経発生面に連鎖的な異常を引き起こす。ウィリアムズ症候群は極端に山谷がある神経認知プロフィールを呈しており、ウィリアムズ症候群成人の最終的な認知プロフィールは比較的良く発達した状態に達する。逸話的にはウィリアムズ症候群の患者は極度に人なつっこく社会性に富んでいるといわれているが、その性格はあまり研究されていない分野である。本論分は遺伝子の影響、認知−行動面の特徴、脳の器質と機能の異常、ウィリアムズ症候群患者の社会的表出に影響を与える環境及び生物学的変数について研究する。遺伝子から脳を経て行動に影響を反映していると思われるウィリアムズ症候群の社会的表現型を科学的に調査して得たさまざまなレベルの知見を統合する。ウィリアムズ症候群の複雑な全体像を複合的かつ科学的に理解することで、典型的な社会的発達や重要な発達イベントやマーカーを理解でき、さらに精神病理学的な境界線の確定につながる可能性がある。

(2008年2月)



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