ウィリアムズ症候群の乳児や幼児における小さい数字と大きい数字の処理
Small and large number processing in infants and toddlers with Williams syndrome.
Van Herwegen J, Ansari D, Xu F, Karmiloff-Smith A.
Neurocognitive Development Unit, UCL Institute of Child Health, UK.
Dev Sci. 2008 Sep;11(5):637-43
先行研究において、普通に発達した6ヵ月の乳児はすでに数量の大小の弁別ができることを示した。しかし、年齢の低い幼児が小さい数量の弁別が出来るケースは、数量(面積や外周など)を代表する変数が同一視可能な場合のみである。対照的に、大きな数量の弁別は数量を代表する変数が系統立てて制御されている場合でも可能である。この発見は幼児において、小さな数量と大きな数量を処理するためには異なる機構が存在することを示唆している。正常ではない症候群の場合、これらの発達はどうなるであろうか?ウィリアムズ症候群は希少な神経認知発障害であり、年齢の高い子どもや成人においても数認知機能に障害がみとめられている。数処理の障害は乳幼児時代に起因するのであろうか? この疑問を解くために、ウィリアムズ症候群の乳児や幼児を対象に小さい数字と大きい数字の弁別テストを実施し調査を行った。ウィリアムズ症候群の幼児は、総面積が数量と同一視できうる場合は要素が2個と3個を弁別できたが、同じ幼児でも数量と要素数が同一視できない場合は、8個と16個の要素を区別できなかった。この発見から、ウィリアムズ症候群において小さな数量の特徴を把握する能力(object-file representation:一つのものを一つとして表示するような認知的仕組み)は機能しているが、大きな数の弁別には年齢が小さい頃から障害があることが示唆される。最後に、我々は幼児期における大きな数の処理の個別の差異を検討することで、小さな数の処理能力でほぼ間違いなく将来の数認知機能発達を予測可能であると考えている。
(2008年9月)
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