ウィリアムズ症候群における算数能力:基礎的概念の重要性に関する洞察



Mathematical skills in Williams syndrome: Insight into the importance of underlying representations.

O'Hearn K, Luna B.
Department of Psychiatry, University of Pittsburgh School of Medicine, Pittsburgh, Pennsylvania.
Dev Disabil Res Rev. 2009 Feb 11;15(1):11-20. [Epub ahead of print]

ウィリアムズ症候群は言語能力が比較的維持されている一方視空間能力に重い障害があることを特徴とする発達障害である。算数能力にも重い障害があることが報告されている。本論分はウィリアムズ症候群における算数能力に関する事実を概説する。その際「どのくらい」(つまり量の概念)と「いくつ」(つまり物の数の概念)に関する判断、すなわち二種類の基礎的概念の統合性と発達過程に焦点を当てる。ウィリアムズ症候群における量や「数直線」という概念に関する研究によれば、ウィリアムズ症候群の全発達期間を通して通常とは異なっており、算数のある面(すべてではない)の差異をもたらしていることを示唆している。ウィリアムズ症候群における物体の個数が少ない場合の概念に関する研究では、この種の概念と「数える」などの初期の数に関する能力との間に相関があることを示している。ウィリアムズ症候群において、幼児期にはこの概念は比較的正常範囲にあるが成長するとその限界が明らかになり、発達過程が途中で止まっていることを示唆している。ウィリアムズ症候群における算数能力の障害は灰白質の減少と頭頂葉の低機能という神経学的データと一致している。ちなみに脳のこれらのエリアは数処理や視空間能力及び視覚注意などと関連している。中心的な数概念に障害があるにもかかわらず、ウィリアムズ症候群の人々はさまざまな算数能力を身につけることができ、数を読むことなど、力を発揮する分野もある。このようにウィリアムズ症候群の人々が持つ優れた言語能力を算数課題の学習に役立てることも可能である。ウィリアムズ症候群の人で発見されたこのような山谷がある算数能力からは、この発達障害の人々の適切な治療方法に関してだけではなく、算数能力につながる基礎的機能や神経的基質や発達の重要性に関する洞察が得られる。

(2009年2月)



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