Williams症候群の視覚認知機能



中村 みほ
愛知県心身障害者コロニー発達障害研究所
認知神経科学 Vol.10 No.2 ページ172

ウィリアムズ症候群(以下WS)は染色体7q11.23部分の欠失がその原因とされ、精神発達遅滞、心血管系異常、特徴的な顔貌をその主症状とする。また、近年その認知機能について、分野ごとのばらつきが大変大きく、表出言語や音楽が比較的得意である反面、視覚認知機能、中でも視空間認知の障害が強いことが注目されており、視覚認知の背側経路の機能であるところの物の動きや位置にかかわる認知が、腹側経路の機能であるとされる物の形、色、顔の認知に比してより強く障害されていることが報告されている。また、背側経路の一部で灰白質Volumeの減少が示されたり、機能的画像診断によりその周辺の機能低下が示されるなど、WSに特徴的な視空間認知障害の症状は背側経路の障害が腹側経路のそれに比して大きいことが原因であるとする根拠が様々に提示されている。我々は10余に渡り、ウィリアムズ症候群をもつ子ども達とかかわり、その臨床症状、生活上の問題点やその対応などについて共に考えることにより、その病態を間近にまた縦断的に検討しうる機会を得た。またさらにその過程において、病態解明を目指して実施した心理学的、神経生理学的検討への協力をいただいた。WSにおける認知機能とその障害を客観的手法で検討し、脳の高次機能との関連を明らかにすることによってより詳細な病態解明に迫ることは、療育についてのより科学的に適切なアプローチを探す上から重要である。また、認知機能のばらつきが大きいWSについてこのような検討を行うことは、副次的に、いまだ明らかになったとは言えないヒトの脳機能についての解明の糸口となりうる可能性があり、有用であると考えられる。今回のシンポジウムにあたっては、前述のようなWSにおける視覚認知の病態解明の流れを概説するとともに、その過程において我々が行ってきた研究に関して、以下のような項目につき紹介したい。

1. 視空間認知障害の症状の紹介とその縦断的検討 2. 背側経路における視空間認知障害の責任領域の究明 3. 顔認知についての神経生理学的検討 (2009年2月)



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