親しみやすさと扁桃体:ウィリアムズ症候群から得られる洞察



Approachability and the amygdala: Insights from Williams syndrome.

Martens MA, Wilson SJ, Dudgeon P, Reutens DC.
Department of Psychology, The Ohio State University, Newark, OH, USA; Nisonger Center, The Ohio State University, Columbus, OH, USA; School of Behavioral Science, The University of Melbourne, Parkville, VIC, Australia.
Neuropsychologia. 2009 May 3. [Epub ahead of print]

ウィリアムズ症候群は遺伝子発達疾患であり超社会性(hypersociability)がその特有の特徴である。扁桃体は社会性の基礎をなす神経システムの統合的構成要素であることが特定されていることから、研究者たちはウィリアムズ症候群の患者にみられる扁桃体体積の異常が彼らの超社会性になんらかの影響を与えている可能性を示唆した。本研究では扁桃体の体積と超社会性の関係を調べることを目的とし、ウィリアムズ症候群患者22人と、暦年齢・性別・利き手を一致させた正常な対照群22人に対して、親しみやすさ尺度を調査した。まず我々は、これまでに発見されているウィリアムズ症候群患者の徴候、すなわち扁桃体体積の増大と「肯定的な顔」や「否定的な顔」に対する親しみやすさの尺度が高いことが関連していることを確認した。ウィリアムズ症候群の患者においては、右側扁桃体体積の増大と親しみやすさ尺度に正の相関があること、特に「否定的な顔」に対する尺度が顕著であることがわかった。予想に反して、検査結果からはウィリアムズ症候群の人々で、特に年齢が若いほど、親しみやすさを決めるときには目や口以外の特徴を利用していると報告されていることが判明した。これらの発見はウィリアムズ症候群における扁桃体の機能障害が彼らの親しみやすさに関連することを裏付けている。さらに、ウィリアムズ症候群の人々は親しみやすさを決定する際に、対照群に比べて非典型的な認知戦略を用いているという仮説を提案する。

(2009年6月)



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