Williams症候群の認知の特徴についての検討
砂原 眞理子1)、猪子 香代2)、大澤 真木子1)
東京女子医科大学病院小児科1)
東京都精神医学総合研究所児童思春期研究部門2)
脳と発達 第40巻 総会号 S315ページ(2008年4月)
【目的】
Williams症候群(WS)の認知機能について。「記憶」と「視覚認知」の問題がこれまで報告されている。今回、K-ABCを用いて、WSの症例の認知機能を検討した。
【対象】
WS18人(男4女14)6-30歳(12.5±6.5)6-13歳未満12人、13-15歳3人、16歳以上3人
【方法】
K-ABCを用い、13歳以上は、対象年齢上限の12歳11ヵ月で評価した。同時期に知能検査(Wechsler系または田中ビネー)を行った。
【結果】
認知処理において、継次処理が同時処理より優位に高い(p<0.01)群(A群、6人)と、継次処理と同時処理に差がない群(B群、12人)に分かれた。知能検査は、A群において5例にWISC3、1例にWPPSIが施行され、全例FIQ55未満であった。B群は5例にWISC3、3例にWAIS-R、2例に田中ビネーが施行され、10例がFIQ55未満、残りの2例は60,65であった。A群は継次処理の中で「数唱」が高得点で、視覚的課題の「手の動作」や「語の配列」ができる例もあった。同時処理は、殆どの課題で低得点であった。B群は「数唱」を含め継次処理の得点が低いが、同時処理の「絵の統合」が高く、[視覚類推]ができる症例もあり、またWISCの「組合せ」「絵画完成」ができる症例もあった。一方WISCの「積み木」同様、「模様の構成」「位置さがし」においては両群とも全員が低得点であった。
【考察】
絵の意味理解によって視覚認知の問題を捉える症例がある。またA群よりB群において、より視覚イメージの記憶が良い。
【結語】
WSの症例に、「記憶」の問題があり「視覚的意味理解」に問題のない群と「視覚認知」に問題があり、「記憶」の問題の無い群がある可能性が示唆された。
(2010年1月)
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