ウウィリアムズ症候群患者の言語能力の比較:言語性検査の比較から
浅田 晃佑12)、岡田 眞子3)、鈴木 茂和3)、岡崎 伸3)、板倉 昭二1)、富和 清隆34)
京都大学大学院文学研究科心理学研究室 1)
日本学術振興会 2)
大阪市立総合医療センター 3)
京都大学大学院医学研究科遺伝カウンセラー・コーディネータユニット 4)
脳と発達 第41巻 総会号 S207ページ(2009年5月)
【背景】
ウィリアムズ症候群(WS)患者は、発話は流暢だが日常生活の意思疎通に困難を抱えることが知られている。これらの言語能力のアンバランスの背景を明らかにするために、新版K式発達検査2001および絵画語い発達検査を用いて言語表出および理解能力の特徴を検討した。
【方法】
K式発達検査の1.認知適応領域発達指数(C-A DQ)・2.言語社会領域発達指数(L-S DQ)、3. 絵画語い発達検査発達指数(VDQ)を比較。
【対象】
大阪市立総合医療センター受診中のWS患者。療育相談の一環としてK式発達検査を実施した24名(男16女8)[この者に対し、C-A DQとL-S DQの比較]。その者の内、加えて、K式発達検査実施の1年以内に絵画語い検査を実施した者13名(男7女6)[この者に対し、L-S DQとVDQの比較]。
【結果】
対象者の各指数の差を統計的に検定した。その結果、C-A DQよりL-S DQが有意に高かった(p<.001)。さらに、L-S DQよりVDQが優位に高く(p<.05)、言語能力を測定する2つの指数間にも差が見られた。
【考察】
WS患者は言語能力(L-S DQ)が認知適応能力(C-A DQ)より高いという特徴が確認された。また、VDQに示される言語理解能力がL-S DQに示される言語表出能力より高いことが示された。このことはL-S DQが検査者の意図を汲んで答える能力を反映するのに対して、VDQは相対的に聴覚・視覚刺激のマッチング能力を反映することが背景にあると考えられる。今回の結果は、言語能力内の差がWS患者の意思疎通の問題に影響を及ぼす可能性を示唆する。教育・就労支援にはこれらへの配慮が望まれる。
(2010年2月)
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