ウィリアムズ症候群の人は実環境における経路をどのように学習するのか?
How do individuals with Williams syndrome learn a route in a real-world environment?
Farran EK, Blades M, Boucher J, Tranter LJ.
Department of Psychology and Human Development, Institute of Education, University of London, UK. e.farran@ioe.ac.uk
Dev Sci. 2010 May;13(3):454-68.
ウィリアムズ症候群の人は視空間認知機能に特異的な障害がある。しかし、この知見は主として実験室で行なわれる小規模な課題の成績から導き出されている。本研究は大規模な経路学習調査を目的とし、ウィリアムズ症候群の人、および2種類の対照群(中程度の学習障害グループと正常な発達をしたグループ)を対象に行なった。標識なしと標識あり(経路に沿って言葉で情報が提供される)の条件では、被験者は2系統あるまったく知らない経路(距離1km、交差点が20箇所)のうちの一方に沿って誘導されたのち、1人でその経路を辿ることを求められる(試行は2回)。ウィリアムズ症候群の被験者は他のグループよりもかなり成績が悪いが、言葉の情報を与えられて何度も誘導を繰り返すとほとんどの曲がり角を覚えられる。ウィリアムズ症候群の被験者の経路知識(正しく曲がる)が改善する程度は、対照群のそれに比肩する。正常発達グループに比べて、ウィリアムズ症候群グループと学習障害グループは相対的知識(目印間の正確な空間的な相対的位置関係)に乏しい。今回行なった大規模な経路学習課題の成績と3種類の小規模課題(迷路学習、相対的認識、地図の利用)との間の相関関係は、正常発達グループではまったくみられず、学習障害グループとウィリアムズ症候群グループにのみわずかな非特異的関連がみられたに過ぎない。
(2010年5月)
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