FMR1突然変異、ウィリアムズ症候群、神経線維腫症1型の各患児の認知行動発達経過:性別の影響
The course of cognitive-behavioral development in children with the FMR1 mutation, Williams-Beuren syndrome, and neurofibromatosis type 1: The effect of gender.
Fisch GS, Carpenter N, Howard-Peebles PN, Holden JJ, Tarleton J, Simensen R.
NYU College of Dentistry New York, New York 10003, USA. gene.fisch@nyu.edu
Am J Med Genet A. 2010 Jun;152A(6):1498-509.
遺伝子疾患を起因とする知的障害児の認知行動発達経過はつい最近になって体系的な調査が始まったばかりである。残念なことに、この種の研究はまだ数が非常に少ない。 これまでに我々は脆弱X症候群(FMR1)突然変異の患児を対象にして認知行動発達を調査し、完全突然変異を有している場合は男性でも女性でもほとんどの人で知能指数(IQ)と適応行動(DQ)スコアの両方が縦断的に低下することを発見した。本研究では、神経線維腫症1型とウィリアムズ症候群の患児に対して、知能指数と適応行動スコアの縦断的変化を調査した。方法は、1回目の検査(T1)と再テスト(T2)の知能指数と適応行動の複合スコアの差異を調査し、彼らの発達軌跡をFMR1突然変異の患児と比較した。FMR1突然変異、ウィリアムズ症候群、神経線維腫症1型の患児65人(年齢は4歳から16歳)に対して、1回目の検査から2年後にスタンフォード・ビネー第4版(the Stanford-Binet 4th Edition)とビネランド適応行動尺度(VinelandAdaptive Behavior Scale)を使って検査を行なった。前回の研究でも認められたFMR1突然変異の患児における知能指数と適応行動の有意な縦断的低下に加えて、その他の被験者においては女性に比べて男性の知能指数が有意に縦断的低下することが判明した。さらに、前回の研究と同じく、FMR1突然変異の患児では適応行動が統計的に有意な低下が認められたが、ウィリアムズ症候群や神経線維腫症1型では見られなかった。さらに、有意な低下はFMR1突然変異の男児にだけみられた。知能指数スコアの低下とは異なり、適応行動の低下は男性と女性の間で有意な差は見られなかった。
(2010年6月)
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