ウィリアムズ症候群の子どもは性別に関する固定観念を持つが人種に関しては持たない



Absence of racial, but not gender, stereotyping in Williams syndrome children.

Andreia Santos 1, 2, Andreas Meyer-Lindenberg 1, and Christine Deruelle 2
1 Central Institute of Mental Health, University of Heidelberg/Medical Faculty Mannheim, Mannheim, Germany
2 Mediterranean Institute of Cognitive Neuroscience, CNRS, Marseille, France
Curr Biol. 2010 Apr 13;20(7):R307-8..

固定概念は、人種・宗教・年齢・性別・国籍など個人がグループに帰属する際の暗黙属性カテゴリーであり、人間関係の中に遍在している。ほんの3歳の子どもでも、異なる民族の個人を識別した上で自分と同じ民族のほうを明らかに好む。固定概念があるおかげで不十分な情報しかない場合でもすばやく行動的決定を行なえる一方で、このような先入観は矛盾と区別の原因となる。特に固定概念は暗黙かつ自動的であるがゆえに、固定概念の根源を理解することは科学的にも社会・政治的にも重要な話題である。外集団によって引き起こされる重要なプロセスに社会的恐怖がある。固定概念に対して影響を与えるこのメカニズムに関する得がたい研究機会は微少欠失疾患であるウィリアムズ症候群の患者がもたらしてくれる。この症候群には社会的恐怖心がなく、異常ななれなれしさや見知らぬ人を含めて誰にでも接近していく行動などが特徴である。我々は本研究で、正常に発達した対象群と比較した結果、ウィリアムズ症候群の子どもは人種に関する固定観念は無いが、性別に関する固定観念は存在することを明らかにした。我々が得たデータは、性別のほうが人種より固定概念が強いというバイアスの発生は神経遺伝学的に別物であることを示している。特に、ウィリアムズ症候群は社会的恐怖心が減少していることから、我々の得たデータは性別の固定概念ではなく人種に関する固定概念の発生における社会的恐怖心処理の役割の存在を示唆する。

(2010年8月)



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