Williams 症候群にみられるclosing-in現象
永井 知代子1), 乾 敏郎2), 岩田 誠3)
1) 科学技術振興機構 ERATO 浅田プロジェクト
2) 京都大学大学院情報学研究科
3) 東京女子医科大学神経内科
第49回日本神経学会一般演題(2008年)
臨床神経学 48巻12号 1115ページ(2008年12月)
【目的】
模写におけるclosing-in現象(CIP)は、見本図上や見本に近づけて描く現象をいい、健常児でも成人脳損傷者でも観察される。視空間認知障害の目立つ発達障害であるWilliams症候群患者(WS)では、条件によりCIPの出方に違いがあるのかを知る。
【方法】
対象は平均15.2歳・IQ49のWS 10人(M6;F4)。1)補完 2)描き順呈示 3)描線軌跡なしの3つの条件下で閉じた図形(三角形・正方形・菱形・五角形・六角形・不定形)と開いた形(波線交差、ジグザグ交差)の模写を調べCIPの出やすさを比較した。
【結果】
CIPは1)>2)>3)の順に出やすく、1)ではoverlap、3)ではapproachが多く、2)はその中間であった。菱形・五角形・ジグザグ交差で多く、図形の複雑性とは相関しなかった。
【結論】
CIP機序として、視空間認知障害を補うための戦略としての代償仮説と、視覚的注意の方向に運動が向かう原初的な引き込み仮説があるが、WSではその両方の関わりが示唆された。
(2010年8月)
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