ウィリアムズ症候群における全体的音認知の根底にある聴覚野の左側性化
Leftward lateralization of auditory cortex underlies holistic sound perception in Williams syndrome.
Wengenroth M, Blatow M, Bendszus M, Schneider P.
Department of Neuroradiology, University of Heidelberg Medical School, Heidelberg, Germany. martina.wengenroth@med.uni-heidelberg.de
PLoS One. 2010 Aug 23;5(8). pii: e12326.
背景:
希少遺伝子病であるウィリアムズ症候群の患者は音楽や音の対して強い親近感を抱くなど特徴的な聴覚表現型を示すことで知られている。本研究では、ウィリアムズ症候群患者の聴覚野における構造と機能間の関連を研究することで彼らの特徴的な音楽性の神経的生化学基質を正確に示すことを狙っている。ウィリアムズ症候群被験者は精神運動上の制約のためわずかな音楽的訓練しか受けていないため、対照群と比べて発見されたどのような変化であれ、聴覚処理や音楽性に関連する遺伝子の貢献によるものという仮説を立てた。
方法/主要な発見:
音響心理学、脳磁界計測装置(magnetoencephalography)、MRIを用いてウィリアムズ症候群の被験者を検査したところ、極端で他に類を見ない全体的音認知を呈した。これは一般集団にこの特徴に関する一様な分布との明らかな対比を示す。機能面では、左聴覚励起野の強度が増加していることを反映している。構造面では、対照群と比べてウィリアムズ症候群の被験者は左聴覚野の体積が2.2倍大きくなっていた。プロの音楽家の聴覚野に同等の体積を有するという報告があった。
結論/意義:
音楽家の聴覚野の灰白質の体積が大きいことは、訓練の量に依存するのか、あるいは生得的な傾向なのかについては神経科学界で論争になっている。本研究ではウィリアムズ症候群の被験者の音楽教育の量は無視できるレベルであり、対照群の被験者についてはこの観点から慎重に選別されている。それゆえに、我々が得た結果は特定の聴覚表現型の神経的生化学基質を明らかにしただけではなく、ウィリアムズ症候群は訓練とは無関係な聴覚システム資質を示す独特な遺伝子モデルであることを提示している。
(2010年9月)
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