ウィリアムズ症候群における徐々に消える図形のトレース
永井 知代子、乾 敏郎、岩田 誠
科学技術振興機構 ERATO 浅田プロジェクト
Brain Cogn. 2011 Feb;75(1):10-7. Epub 2010 Nov 12.
ウィリアムズ症候群は神経発達疾患であり視空間能力の著しい障害が特徴である。ウィリアムズ症候群における視空間能力を反映している図形描画能力はまだ十分な調査が行われていない。本研究の目的はウィリアムズ症候群の人の描画能力が典型的な発達をした子供と異なるかどうかを調べることである。2の被験者グループ(平均年齢16歳のウィリアムズ症候群、5-6歳の典型的な発達をした子供)に対して、PC画面から徐々に消えていく目的図形をトレースすることが必要な、「徐々に消える図形のトレース」課題を行わせてその成績を比較した。正常な子供の場合は、消えさるまでの時間が長い場合は明らかに成績が良くなるが、ウィリアムズ症候群にはみられない。さらに、正常な子供の場合は、図形の形状(閉じているか、開いているか)にかかわらず、6個以上の角があると成績が悪くなるが、ウィリアムズ症候群の場合は5個以上の角があると概して成績が悪いが、開いた図形の場合は比較的成績が良い。これらの知見は、視覚走査の発達が未完であることにより視空間認知範囲が少ないことと、全体処理に関する不釣合いな発達が組み合わさってウィリアムズ症候群の描画障害につながっていることを示している。
(2010年12月)
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