自閉症スペクトラム障害とウィリアムズ症候群における視線回避と認知負荷対応戦略
Gaze aversion as a cognitive load management strategy in autism spectrum disorder and Williams syndrome.
Doherty-Sneddon G, Riby DM, Whittle L.
School of Life Sciences, Northumbria University, Newcastle upon Tyne School of Psychology, Newcastle University, Newcastle upon Tyne School of Natural Sciences, Stirling University, Stirling, UK.
J Child Psychol Psychiatry. 2011 Oct 26. doi: 10.1111/j.1469-7610.2011.02481.x.
背景:
対面質問を行う際に、正常に発達した子供や成人は考えている時に視線回避、すなわち質問者から視線をはずす。視線回避は質問が難しい場合には増加し、回答の正確性を増す効果がある。本研究は自閉症スペクトラム障害(autism spectrum disorder;社会性の減少と異形な顔注視が付随する)とウィリアムズ症候群(超社会性と異形な顔注視)の患者が対面関係の際に認知負荷に対応するために視線回避を利用意するかどうかを確認した初めての研究である。
手法:
自閉症スペクトラム障害とウィリアムズ症候群に対して対面質問を行う際の典型的な視線回避状況を探索する2種類の研究を行った。
結果:
研究1では、自閉症スペクトラム障害の子どもは質問の難しさが増すと視線回避も増加した。さらに、彼らが視線回避を行うのは質問への回答を考えている間がほとんどであり、正常に発達した子どもから得られた知見を反映していた。自閉症スペクトラム障害の被験者がみせる普通とは異なる重要な行動は、質問者の話を聞いている間に視線回避のレベルが有意に上昇することである。研究2では、ウィリアムズ症候群の被験者は質問の難しさや対面関係のいろいろな時点における視線回避は典型的なパターンを示した。
結論:
2種類の異なる神経発達障害は、どちらも注意を制御することに障害があり社会的相互関係が異常であることが特徴であるが、視線回避は概して典型的なパターンを示す。すべてのグループが質問の答えを考えている間が最も視線回避が多く、質問の難しさが増すと視線回避も増加する。さらに、自閉症スペクトラム障害の子どもは質問を聞いている間に視線回避レベルが上昇するが、考えている間や反応している際には上昇は見られない。これは積極的に視覚的手がかりとの関連性を避けているというより、見逃していることを示している。この結果は、療育専門家がこれらの障害者がみせる視線回避をどのように理解するか、あるいは社会性技能の訓練にとって重要な含意がある。
(2011年11月)
目次に戻る