障害物を越える際の歩調適応によってウィリアムズ症候群の歩行運動に対する視覚制御の障害が明らかになる



Gait adaptation during obstacle crossing reveals impairments in the visual control of locomotion in Williams syndrome

D.R.Hocking(a, N.J.Rinehart(a, J.L.McGinley(b, B.Galna(c, S.A.Moss(d, J.L.Bradshaw(e
a)Centre for Developmental Psychiatry and Psychology, School of Psychology and Psychiatry, Monash University, Notting Hill, VIC, Australia
b)Murdoch Children's Research Institute, Royal Children's Hospital, Melbourne, VIC, Australia
c)Clinical Ageing Research Unit, Newcastle University, Newcastle upon Tyne, England
d)School of Psychology and Psychiatry, Monash University, Caulfield, VIC, Australia
e)Experimental Neuropsychology Research Unit, School of Psychology and Psychiatry, Monash University, Clayton, VIC, Australia.
Neuroscience Volume 197, 1 December 2011, Pages 320-329

最近の研究によってウィリアムズ症候群患者(神経発達障害を呈する希少遺伝子疾患)は、視覚制御や歩行運動に寄与している可能がある脳の頭頂部および小脳部に異常があることが明らかになっている。我々は頭頂部および小脳部の異常が、ウィリアムズ症候群の成人において時空間的特徴や障害物を超える際の足位置のばらつきに関する障害に影響を与えているかどうかを、知能指数を一致させたダウン症候群のグループおよび正常に発達した対照群と比べて調査した。時空間的な特徴と通路上の地面に置いた小さな障害物との相関における足位置のばらつきを検査するために「GAITRite walkway」を利用した。ウィリアムズ症候群の成人は、時空間的歩調特徴の調整遅れとともに、障害物を越える一歩の直前の最後の一歩の空間的足位置調整に視覚情報の利用が限定されていることが判明した。対照的にダウン症候群の成人は、障害物を越える前や越えた後の歩調調整に関して、より長い距離において歩幅や歩調をさまざまに調整していることから、小脳の機能不全が示唆される。対照群は課題を繰り返すうちに障害物を越える際の歩調のばらつきを小さく抑えるようになるが、ウィリアムズ症候群もダウン症候群も訓練と共に歩調が安定することはなかった。これらの知見はウィリアムズ症候群における視覚運動機能が柔軟性に乏しく制限が強いことを示しており、これは頭頂部および小脳部域の異常が広く拡散していることと一致する。

(2011年12月)



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