ウィリアムズ症候群における知覚学習:平均値の向こうを見る
Perceptual learning in williams syndrome: looking beyond averages.
Gervan P, Gombos F, Kovacs I.
Department of Cognitive Science, Budapest University of Technology and Economics, Budapest, Hungary.
PLoS One. 2012;7(7):e40282. Epub 2012 Jul 5.
ウィリアムズ症候群は遺伝子起因の神経発達疾患であり、不均一な認知プロフィールと驚くべき神経行動面の差異が個人間に存在することを特徴としている。先行研究ではウィリアムズ症候群に異なるタイプの記憶欠損と学習障害が存在することを明らかにした。今回はウィリアムズ症候群における基礎的視覚課題の成績向上容量を研究する。後頭視覚機能を示す輪郭統合(contour integration)パラダイムを用い、最初(ベースライン)と学習後におけるウィリアムズ症候群患者の成績を分析した。ウィリアムズ症候群患者の不均質な結果をひとまとめに統合するのではなく、同年齢で正常に発達した対照群の平均値からの偏差という観点で個人個人の成績を分析した。このアプローチをとることで、輪郭統合に関してウィリアムズ症候群の患者の成績が良くないことの原因となる可能性につながる情報を明らかにすることが出来た。ウィリアムズ症候群患者の大部分はベースラインも学習成績も悪かったが、個人分析の結果では、ベースラインと学習成績の乖離を示すウィリアムズ症候群被験者が存在することも明らかになった。輪郭統合のベースライン成績が障害を受けているにもかかわらず、正常に発達した対照群と比肩するほどの学習容量を示すウィリアムズ症候群被験者が存在する一方で、最初のベースラインの成績レベルは高いにもかかわらず、学習容量は高くないウィリアムズ症候群被験者も存在した。これらのデータは初期の成績と知覚学習後の成績を決定する要素の間に解離があることを示唆している。
(2012年8月)
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