ウィリアムズ症候群にみる言語習得の非定型的プロセスと言語能力のモジュール性を巡る考察
片田 房
早稲田大学理工学術院
電子情報通信学会技術研究報告, vol. 112, no. 103, TL2012-4, pp. 19-23, 2012年6月
7番染色体長腕7q11.23領域から約26の遺伝子(とりわけエラスチン遺伝子)が欠損して発症するウィリアムズ症候群(WS)は,発達性疾患であるにもかかわらず,殊に思春期以降の疾患者において高次脳機能の認知的乖離現象が特徴的に認められることから,候補遺伝子と認知機能の関連性が解明される可能性に注目が集まっている。先行研究においては,このような乖離現象は言語能力のモジュール性を証明するものとする生得説派(nativism)の解釈がある一方で,WS疾患児の言語発達の非定型的プロセスゆえに,モジュールの生得性を証明するものではないとする神経構成論派(neuroconstructivism)の解釈がある。本稿では,WS疾患児によるラドリング(ミニグラマーを持った言葉遊び)の習得とその能力の維持状態を報告し,言語習得能力の可塑性を示唆するものであることを主張する。更に,非定型性がモジュール性を内包する可能性を提示する。
(2013年2月)
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