認知機能のモジュール性と遺伝子性障害



Science誌に掲載された2つの記事です。 後者の日本語訳は ホームページから持ってきました。

(1999年12月)

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Cognitive Modularity and Genetic Disorders.

Paterson SJ, Brown JH, Gsodl MK, Johnson MH, Karmiloff-Smith A
Neurocognitive Development Unit, Institute of Child Health, University College, London WC1N 1EH, UK. Psychology Department, University College, London WC1E 6BT,UK. Centre for Brain and Cognitive Development, Birkbeck College, London WC1E 7JL, UK.
Science 1999 Dec 17;286(5448):2355-2358

本研究は、成人の神経心理学モデルを遺伝子に起因する発達障害の説明に用いることを試 みている。子どもや大人が一様ではない認知プロフィールを示す場合、このような表現型 表出は幼児期に端を発する状態を特徴付けており、障害を受けているかどうかにかかわら ず、これらの能力を助長するモジュール性が発揮されていると主張されてきた。ウィリア ムズ症候群(産まれつきモジュール性を持つという主張を裏付けると言われている表現型) の乳児に対する2つの実験から得られた発見によれば、症候群に内在する2重の解離が見 られる。すなわち、数値課題ついて、彼らは乳児期には成績がよいことに比べて成人では 劣っている。一方で言語課題については、乳児期には劣っているのに比べて成人では成績 がよい。これらの結果の理論的、臨床的意味は遺伝子性障害に対する研究の注目点を変更 させる可能性を含んでいる。

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認識欠陥における発達の役割

Development's Role in Cognitive Deficits

Science December 17, 1999, Vol.286, 2229

脳障害を受けた正常なオトナは、ある種の認知行動は影響を受けないが、別の認知は顕著 に減退するという認識パターンを示すことがある。この表現型は、ウィリアムス症候群(WS) のような多様な遺伝子性障害に見られる認識欠陥のモデルと見なされてきた。成人のWS患 者は視覚空間や数値課題に対して相対的に貧弱な結果を示すが、言語課題に対してはほぼ 正常な能力を示す。Patersonたち (p. 2355; および Bishopによる展望記事参照 )はWS の乳児の集団について研究し、乳児は数値課題はよくこなすのに言語課題はそれほどでも ないことを見つけた。この成人と乳児の違いから、認知の発達はモジュール別に行われる 単純なものだけではないであろうし、また、発達の段階に応じて、遺伝的障害による認知 形態は変化することが示唆される。

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