ウィリアムズ症候群における皮肉、比喩や笑いに対する理解
Comprehension of sarcasm, metaphor and simile in Williams syndrome.
Godbee K, Porter M.
Department of Psychology, Macquarie University, Sydney, NSW, Australia.
Int J Lang Commun Disord. 2013 Nov;48(6):651-65. doi: 10.1111/1460-6984.12037.
背景:
ウィリアムズ症候群の人々は全般的言語能力が比較的良い状態で、非常に友好的かつ社会的であると特徴づけられることが多いが、言外の意味をもつ言語表現の理解面において現実的な困難や問題があることの証拠が出つつある。
目的:
主たる目的は、ウィリアムズ症候群の皮肉、比喩や笑いに対する理解を検査し、正常に発達した対照群と比較することである。副次的な目的は、ウィリアムズ症候群と正常に発達した母集団において、言外の意味をもつ言語表現の理解と他の一連の認知能力との関連を調べることである。
方法と手順:
26人のウィリアムズ症候群被験者を、26人の正常に発達した暦年齢を一致させた対照群(TDCA)と26人の正常に発達した精神年齢を一致させた対照群(TDMA)と比較した。被験者に言外の意味をもつ言語表現を発する登場人物が出てくる物語を聞かせる。続いて彼らは登場人物がコメントとして何を言いたかったかを質問される。本研究の副次的目的の調査を目的として、発話語彙、言語ワーキングメモリー、知覚統合、推論に基づく推理、全般的認知能力などを含む改訂版ウッドコック・ジョンソン認知能力試験(Woodcock-Johnson (Revised) Tests of Cognitive Ability)を使用して認知能力を評価した。
成績と結果:
ウィリアムズ症候群における言外の意味をもつ言語表現の理解はTDCAに比べて有意に低いレベルであったが、TDMAと比較すると有意な差はない。正常に発達した対照群においては、個々の認知能力測定結果は、言外の意味をもつ言語表現の理解に関する個人個人の測定結果と強い相関があった。この相関はウィリアムズ症候群の被験者においては常時みられるわけではない。特に、ウィリアムズ症候群における皮肉の理解はどの認知能力とも有意な相関関係はみられず、発話語彙も言外の意味をもつ言語表現の理解に関する成績と有意な相関関係はない。
結果と含意:
ウィリアムズ症候群における笑いに対する理解はTDCAより低いレベルであるが、彼らの精神年齢相当であるように見受けられる。大部分のウィリアムズ症候群においては、皮肉や比喩への理解は彼らの認知能力や精神年齢レベルを上回っていることを示す。さらに、ウィリアムズ症候群における言外の意味をもつ言語表現の理解と認知能力との関連パターンを対照群と比較すると、正常に発達したヒトにおいて言外の意味をもつ言語表現の理解の基礎をなす言語および認知しシステムが、ウィリアムズ症候群においては異なった相互反応と統合が行われていることを示唆している可能性がある。
(2013年11月)
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