ウィリアムズ症候群と正常に発達したヒトの自己中心的及び他者中心的進路決定戦略



Egocentric and allocentric navigation strategies in Williams syndrome and typical development.

Broadbent HJ, Farran EK, Tolmie A.
Psychology and Human Development, Institute of Education, University of London,UK.
Dev Sci. 2014 Apr 7. doi: 10.1111/desc.12176. [Epub ahead of print]

最近の発見によれば、ウィリアムズ症候群で報告されている小さな範囲における視空間課題の障害は広い範囲の空間にも拡張されることが示唆されている。特に、ウィリアムズ症候群の患者はしばしば自己中心的な空間記号化(環境や配列内にある物体相互の関係の記号化)に障害があることを示す。本研究では、新しい三次元仮想環境内における広い範囲の空間内でウィリアムズ症候群患者が示す進路決定戦略に関する非典型的な空間処理の効果を調査する。広い空間における進路決定について行われた最近の研究で判明したことは、正常に発達した子どもは逐次型で自己中心的な戦略(経路全体に渡って右や左に体を回転させた順序を思い出す)に主として頼っていたが、5歳から10歳の間で他者中心的戦略をもっと利用できるようになる。5歳から10歳の正常に発達した子どもとウィリアムズ症候群の患者が、自発的に利用する進路決定戦略を分析した。最短経路を見つけるためには空間的相互関係の知識が必要な試行に際して他者中心的戦略を利用する能力も合わせて調査した。調査結果からは、正常に発達した子どもとは異なり、自発的な進路決定を行っている間はウィリアムズ症候群のグループは逐次型で自己中心的な戦略を主に使用していない。その代わりにウィリアムズ症候群の患者は正しい環境上の目印が見つかるまで経路に沿い続けており、これは道順を発見するために時間消費型で非効率的な視覚一致戦略を採用していることを示している。さらにウィリアムズ症候群の患者は他者中心的空間記号化に障害を示しており、環境レイアウトの心的表象を必要とするが、その構築に問題があるために最短経路の決定に障害を呈する。このことは環境における次のような拡張経験の発見にもつながる、すなわち、正常に発達とは異なり、ウィリアムズ症候群においては経験を積んでも空間関係処理の発達には貢献しないということを示唆している。自己中心的及び他者中心的空間記号化の非典型的な表現型を、ウィリアムズ症候群での小さな範囲における視空間課題の障害や非典型的な皮質発達と関連付けて議論する。

(2014年4月)



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