ダウン症候群とウィリアムズ症候群の安静時脳活動の機能的結合解析結果を正常に発達した対照群と比較した



Resting State Functional Connectivity in Individuals with Down Syndrome and Williams Syndrome Compared to Typically Developing Controls.

Vega JN(1), Hohman TJ, Pryweller JR, Dykens EM, Thornton-Wells TA.
Author information:
(1)Vanderbilt University, 37232, Tennessee, United States ;
jennifer.n.vega@vanderbilt.edu.
Brain Connect. 2015 Feb 25. [Epub ahead of print]

脳領域間のボールド効果(blood oxygen level-dependent(BOLD))信号の低周波(<0.1Hz)変動の時間的相関を調べるという「安静時脳活動の機能的結合解析(Resting State Functional Connectivity:rsFC)」手法の出現によって、正常に発達したヒトの脳の機能的構造の理解が飛躍的に進歩した。本研究はダウン症候群のrsFCを調べて他の神経発達疾患であるウィリアムズ症候群や正常に発達した対照群と比較した。ダウン症候群の被験者10人、ウィリアムズ症候群の被験者18人、正常に発達した対照群40人がそれぞれ3テスラのMRI検査を受けた。7種類の機能的ネットワークを対象にネットワーク間、およびネットワーク内のrsFCについて、グループ間の違い(ダウン症候群と正常に発達した対照群、ダウン症候群とウィリアムズ症候群、ウィリアムズ症候群と正常に発達した対照群)を調べた。ダウン症候群に対しては、rsFCと他の認知機能や遺伝的リスク要素との間の関連についても調査した。ダウン症候群と正常に発達した対照群との比較では、21種類のネットワーク対の内6種類についてネットワーク間の接続性レベルが高くなっていたが、ネットワーク内の接続性には差は見られない。ウィリアムズ症候群の被験者はダウン症候群と比較して、ネットワーク内の接続性レベルが低く、ネットワーク間の接続性レベルには有意な差はみられない。最期に、ウィリアムズ症候群と正常に発達した対照群との比較においては、正常に発達した対照群に比べて複数のネットワーク内の接続性レベルが低く、ある特定のネットワーク対においてだけネットワーク間の接続性レベルが高いことがわかった。サンプル数が少ない予備的な調査ではあるものの、この発見は神経発達疾患患者のネットワーク間の接続性が全体的に変化していることを示唆するとともに、ダウン症候群患者においては多くの脳領域間でその差が悪化していることを示している。しかし、ダウン症候群で見られるこの変異はネットワーク内の接続性にまで広がっているようには見えない。そのため、ネットワーク間の接続性の変異は、ネットワーク内の活動パターンは無傷であるという文脈で語られるべきである。対照的にウィリアムズ症候群ではDMN(デフォルト・モード・ネットワーク)や体性運動ネットワークにおけるネットワーク内の接続性レベルが正常に発達した対照群に比べて顕著に低い。これらの知見は、神経発達疾患スペクトラム全体にわたって脳機能と認知能力の間の関連を解き明かすことに役立つと考えられる課題ベースの手続きを用いたさらなる調査が必要であることを示している。

(2015年3月)



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