社会不安障害患者及びウィリアムズ症候群患者における顔の表情に対する認知処理:機能MRIを使った研究
Facial emotion processing in patients with social anxiety disorder and Williams-Beuren syndrome: an fMRI study.
Binelli C(1), Muniz A(1), Subira S(1), Navines R(1), Blanco-Hinojo L(1), Perez-Garcia D(1), Crippa J(1), Farre M(1), Perez-Jurado L(1), Pujol J(1), Martin-Santos R(1).
Author information:
(1)From the Department of Psychiatry and Psychology, Hospital Clinic, Institut d'Investigacions Biomedicas August Pi I Sunyer (IDIBAPS), Centro de Investigacion Biomedica en Red en Salud Mental (CIBERSAM) G25, Barcelona, Spain (Binelli, Muniz, Navines, Martin-Santos); the Department of Clinical and Health Psychology. Universitat Autonoma de Barcelona, Bellaterra, Spain (Binelli, Subira); the Department of Psychiatry and Clinical Psychobiology, University of Barcelona, Barcelona, Spain (Muniz, Martin-Santos); the MRI Research Unit, Hospital del Mar, CIBERSAM G21, Barcelona, Spain (Blanco-Hinojo, Pujol); the Department of Neuroscience and Behaviour, Ribeirao Preto Medical School, University of Sao Paulo, SP, Brazil (Crippa); the Human Pharmacology and Clinical Neurosciences Research Group, Neurosciences Research Programme, IMIM-Hospital del Mar Medical Research Institute and Universitat Autonoma Barcelona, (UDIMAS-UAB), Barcelona, Spain (Perez-Garcia, Farre, Perez-Jurado); and the Unitat de Genetica, Universitat Pompeu Fabra, Parc de Recerca Biomedica de Barcelona (PRBB), and Centro de Investigacion en Red en Enfermedades Raras (CIBERER), Barcelona, Spain (Perez-Jurado).
J Psychiatry Neurosci. 2015 Nov 30;41(1):140384. doi: 10.1503/jpn.140384. [Epub ahead of print]
背景:
社会不安障害(social anxiety disorder)とウィリアムズ症候群は遺伝子、発達、認知プロフィールなどにおいて大きく異なる2種類の疾患である。両疾患とも、社会的接近性、社会的感情の手がかりの処理、注視行動などを含む重なり合う領域において影響を受けやすい能力を有しているが、その一方で、これらの領域においてはある範囲で正反対の行動をみせる。社会不安障害患者及びウィリアムズ症候群患者の顔の表情に対する認知処理パラダイムにおける脳の活性化パターンの共通性と特殊性を調べた。
手法:
社会不安障害患者及びウィリアムズ症候群患者と年齢と側性を一致させた健康な対照群に対して、幸せ・恐怖・怒りをそれぞれ表した顔の認知処理を行っている最中に機能MRIを使って調査した。
結果:
社会不安障害患者20人、ウィリアムズ症候群患者20人、健康な対照群20人を研究対象とした。社会不安障害患者及びウィリアムズ症候群患者は辺縁系の活性化パターンには差がなかった。違いが見られたのは、ウィリアムズ症候群患者における顔処理ネットワーク内の初期視覚エリアと、社会不安障害患者における、不安をトップダウンで調節する前頭前野皮質領域と紡錘回においてであった。社会不安障害患者及び対照群と比較した場合、ウィリアムズ症候群患者は、右下後頭回皮質が活性化しない。加えて、対照群と比較した場合ウィリアムズ症候群患者は、後方一次視覚野皮質の活動性低下がみられ、右側頭弁蓋の活性解除が有意に少ないことが示された。社会不安障害患者グループの被験者はウィリアムズ症候群患者や対照群グループに比べて前頭前野の活性化が少ない。加えて、対照群と比較して社会不安障害患者は紡錘回の活性化が減少している。社会不安障害患者とウィリアムズ症候群患者は上側頭回、すなわち注視処理に関連している領域において活性化パターンに差異がみられた。
制限:
ウィリアムズ症候群患者グループにおける観察データはウィリアムズ症候群患者被験者の知能指数によって制限がかかっている。しかし、この発見の特異性は、ウィリアムズ症候群患者で見られる脳の活性化パターンが、知的障害それ自体と言うよりも、神経生物学的基質をより強く反映していることを示唆している。
結論:
社会不安障害患者及びウィリアムズ症候群患者は共通かつ特異的な脳活性化パターン示した。この結果は、社会不安障害患者及びウィリアムズ症候群患者が、顔の表情に対する認知処理を行っている最中の皮質領域の役割に光を当てるものである。
(2015年12月)
目次に戻る