正常な発達と異常な発達における経路知識と構成知識:まばらな環境と豊富な環境の比較
Route knowledge and configural knowledge in typical and atypical development: a comparison of sparse and rich environments.
Farran EK(1), Purser HR(2), Courbois Y(3), Balle M(3), Sockeel P(3), Mellier D(4), Blades M(5).
Author information:
(1)Department of Psychology and Human Development, UCL Institute of Education, University College London, 25 Woburn Square, London, WC1H 0AA UK.
(2)School of Psychology, University of Nottingham, Nottingham, UK.
(3)Laboratoire PSITEC (EA 4072), Universite de Lille, Villeneuve d'Ascq, France.
(4)Laboratoire PSY-NCA (EA 4306), Universite de Rouen, Rouen, France.
(5)Department of Psychology, University of Sheffield, Sheffield, UK.
J Neurodev Disord. 2015 Dec 15;7:37. doi: 10.1186/s11689-015-9133-6. eCollection 2015.
背景:
ダウン症候群患者とウィリアムズ症候群患者は経路決定技能が劣っており、これが自立につながる潜在能力に影響を与えている。これらのグループに対して仮想空間を用いて2種類の経路決定側面を調査した。経路知識(決まった方向変更順序に従ってA地点からB地点に行く道を習得する技能)と構成知識(環境内の場所間の空間的位置関係の知識)である。
手法:
正常に発達した(正常群)5歳から11歳の子ども(N=93)、ダウン症候群患者(N=29)、ウィリアムズ症候群患者(N=20)に対して、手がかりがまばらな格子状迷路と豊富な迷路を提示した。どちらの迷路でも、被験者はA地点からB地点への経路とA地点からC地点への経路を学習したのち、B地点からC地点への新たな近道を見出すことを求められる。
結果:
まばらな環境と豊富な環境で成績は広い意味で似ていた。ダウン症候群の被験者の成績が一番悪いものの、被験者の大部分は新たな経路を発見できた。しかし、今回我々が構成知識を測定する目的とした、近道を見出す能力は3グループ全部で限界があった。つまり、正常群では59%が近道を発見できたのに対して、ダウン症候群被験者では10%、ウィリアムズ症候群被験者では35%であった。経路知識と構成知識についてグループ間みおいて、関連する基礎メカニズムにある違い、さらに成績の発達軌跡に存在する違いを観察した。正常群の被験者だけが最初の施行に比べて最後の施行で歩く距離を短くできていて、これは試行を繰り返すことで構成知識を増やせていること示している。ダウン症候群のグループはしばしばB地点からC地点への経路を得るのに代替え的な戦略、すなわち教えられた2種類の経路を合算する方法を使用した。
結論:
この知見はダウン症候群やウィリアムズ症候群には構成知識に障害があることを示しており、程度はダウン症候群のほうが重度である。このことはこれらのグループでは固定化された経路知識に依存した経路決定方法に頼っていること、そしてその結果としてかれらは簡単に道に迷うことを示唆している。経路知識は、ダウン症候群とウィリアムズ症候群の両方で障害を受けていて、これら3つのグループにおける異なる基礎プロセスに関連している。このことを非典型的なグループにおける注意や視空間処理の問題に関連して議論する。
(2016年2月)
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