不注意、衝動性を呈したWilliams症候群女児例における前頭葉機能の電気生理学的検討
石井 小綾香12)、加賀 佳美12)、反頭 智子1)、青柳 閣朗1)、金村 英秋1)、中根 貴弥1)、杉田 完爾1)、相原 正男3)
山梨大学医学部小児科1)、独立行政法人国立病院機構甲府病院小児科2)、山梨大学大学院医学工学総合研究部3)
脳と発達 第47巻 学術集会号 S318ページ(2015年5月)
【はじめに】Williams症候群は妖精様顔貌、心血管病変、精神発達遅滞、視空間認知障害を特徴とし、7q11.23領域に欠失を認める隣接遺伝子症候群である。また、認識機能のバラつき、注意欠陥多動傾向の頻度が高いことが報告されているがその詳細は明らかではない。不注意、衝動性を呈し、電気生理学的に非特異的な前頭葉機能障害が示唆されたWilliams症候群の一例について報告する。
【症例】12歳女児。物に対する欲求を抑制できないとの主訴で来院。AD/HD-RSは不注意17、多動・衝動性7、PARS23、WISC-IVはFSIQ47 、VCI49、PRI56、WMI50、PSI73。
【方法】前頭葉機能課題(1)後出しじゃんけん(RPS)、(2)語の流暢性(VFT) 、(3)NoGoを施行し、(1)(2)は近赤外線スペクトロスコピー(NIRS) を用いて前頭部Oxy-Hb濃度変化を計測した。(3)は5種類の色をランダムに提示し、手がかり刺激の後のGo刺激時にボタンを押す課題で、NoGoN2、Go/NoGoP3電位について検討した。
【結果】RPSでは勝ちの正答率は低く、負けの平均正答率は高かったが、ブロック毎の差が極めて大きかった。VFTでは正答数は高かったが、回答がしりとりになってしまい無関係な回答も多く見られた。RPS、VFTともに、課題中の前頭部Oxy-Hb濃度の上昇を認めた。NoGoでは、お手つき、見逃しエラーともに多く、NoGoN2は認められず、Go/NoGoP3振幅は低かった。
【考察】発達の過程で習得されたじゃんけんやしりとりと似た課題であるRPSとVFTは好成績ではあったが、保読や注意の持続困難を認めた。一方、新奇の葛藤指示を含むNoGo課題は低成績で、NoGo電位の異常を認めた。新奇の葛藤指示の遂行困難に比して、既知の葛藤指示の行動抑制が容易であること、前頭部Oxy-Hb濃度上昇が認められたことはAD/HDと異なっており、前頭葉に関連したネットワークの障害が示唆される。
(2016年4月)
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