ウィリアムズ症候群における対比を目的とした韻律強調:詳細な音韻分析の結果
Contrast-marking prosodic emphasis in Williams syndrome: results of detailed phonetic analysis.
Ito K(1), Martens MA(2,)(3).
Author information:
(1)Ohio State University, Department of Linguistics; 1961 Tuttle Park Place, Ohio Stadium East 108A, Columbus, OH, 43210.
(2)Department of Psychology, The Ohio State University at Newark, 1179 University Dr, Newark, OH, 43055.
(3)Nisonger Center, The Ohio State University, 1581 Dodd Dr, Columbus, OH, 43210.
Int J Lang Commun Disord. 2016 Apr 26. doi: 10.1111/1460-6984.12250.
背景:
ウィリアムズ症候群患者の発話に関する過去のレポートによれば、彼らの韻律は変則的であり、言語コミュニケーションに障害をもたらしている可能性があると示唆されている。現存する韻律評価ではウィリアムズ症候群患者は対比を表現するために韻律を用いることができないと確認されているが、これらの報告書は典型的に発話データの詳細な音韻分析を行っていない。本研究では、対象としている言語治療の開発を目的として、発話韻律の音響特徴を調べた。
目的:
本研究は韻律強調(持続時間、強度、基本周波数F0)に関連する3種類の相関を調べ、ウィリアムズ症候群患者が3種類の韻律手がかりのどれか、あるいはすべてを生成することに障害があるかどうかを確認する。
方法と手順:
12人のウィリアムズ症候群患者と歴年齢を一致させた正常に発達した被験者12人が生成した発話を記録した。一連の線画命名課題を用いて以下の3種類の文脈において目的とする句を引き出した。(1)対比なし:ラケット持ったゴリラ→風船を持ったウサギ、(2)動物の対比:風船を持ったキツネ→風船を持ったウサギ、(3)物体の対比:ボールを持ったウサギ→風船を持ったウサギ。韻律的突出(持続時間、強度、基本周波数F0)である3種類の音韻相関を3種類の参照対象文脈間で比較した。
成績と結果:
2つのグループは、対比を表現するために単語の持続時間と強度を利用する場合は、際立った類似性を示した。2つのグループとも、動物の対比と物体の対比に関してそれぞれ、最終的な持続時間に対しては弱化(reduction)と強化(enhancement)を、強度に関しては強化と弱化を示した。2つのグループは基本周波数F0の使い方に差がみられた。すなわち、対照群は文脈にかかわらず、物体に比べて動物に対して高い基本周波数F0を使用しており、この差は動物を示す名詞が対照的であればより強調された。それに比較して、ウィリアムズ症候群のグループは動物より、物体のほうが対照的なケースで高い基本周波数F0を使用した。
結果と意義:
このデータはウィリアムズ症候群の患者は対照を示すための韻律強調を使う技能が欠けているというこれまでの調査結果と矛盾している。方法論の差がこの違いを生んでいる可能性があるかもしれない。このデータはウィリアムズ症候群患者は対照を示すために適切な韻律のてがかりを使えることを示唆しているが、一方で声の高低の使い方は幾分異なっている。さらなるデータと会話理解能力の研究を行うことで、声の高低の調節がウィリアムズ症候群患者の会話治療の対象となりえるかどうかが判明する。
(2016年6月)
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